カラー・オブ・ハート [DVD]
価格: ¥2,700
ちょっとオタクな少年デイビッド(トビー・マクガイア)と、双子の妹で、いい男に目がない今どきの娘ジェニファー(リース・ウィザースプーン)が、テレビのリモコンの故障が原因で、50年代の白黒ホームドラマ「プレサントヴィル」の中に入ってしまう。平和な毎日。カロリーたっぷりの食事。優しい両親、隣人に友人たち。すべての人が完璧なまでに善良で、失敗をしない。だがある時、白黒ドラマの世界に紅い花が咲いた。グリーンの自動車が走り始めた。ドラマの中の人々が恋や憎しみを知ったことから、秩序が保たれていた白黒の街は大混乱に。
『デーヴ』のシナリオで注目されたゲーリー・ロスの第一回監督作品で、50年代アメリカの象徴、白黒のホームドラマの世界に、今どきの少年少女が迷い込んだらどうなるか?というユニークな発想が冴えている。単に50年代の風俗を描写して90年代とのギャップで笑いを誘うのではなく、理想がすべて実現した架空の世界か、騒々しい現実に生きるのが良いか、という深淵なテーマを当時最先端のデジタル技術を駆使して描いた、ある意味哲学的な面を持つ作品である。いかにも50年代ホームドラマの父親役といった風情のウィリアム・H・メイシーの困った表情も味わい深いが、カラー化し、夫以外の男性に心を許してしまう母親ジョアン・アレンの控え目な美しさが印象に残る。アレンはこの作品での演技で、数多くの女優賞を受賞した。ロス監督の手元には、3時間にわたるこの映画の完全版が存在するそうだ。(斉藤守彦)