一輪の花に、もう夢中!
★★★★★
「イメージを読む―美術史入門」で、絵画の謎をやさしい文章で、非常に魅力的に説いた同著者の本を読まれた方も多いでしょう。これは、なんと、たった「一輪の薔薇・花」について書かれた本です。主に美術や詩の世界における「薔薇・花」にどのようなメッセージが含まれているのか、古今東西の「薔薇・花」を網羅しています。
目次をあげますと、薔薇の聖母/薔薇を食べた驢馬/レオナルド・ダ・ヴィンチの庭園/薔薇園にて/美しき女庭師/花の道/菊と蓮/グロテスクの系譜(笑う牛・花となった人間)/花と髑髏/刻印された《詩》/石の花/花の復権(W.モリス)/生きている花
錬金術の思想が美術に及ぼした影響、ボッティチェルリの「春」、ダ・ヴィンチ絵画における植物の象徴性、庭園の図像学、日本における花のイメージ、紋章における花のシンボリズム、いけばなの普遍性、等、どれも興味をそそる内容で、読み進むほど、あまりの楽しさに興奮してしまう書物です。
カラー図版は巻頭数ページですが、モノクロ図版が多量に含まれています。何度も何度も繰り返し読みたくなる魅力的な書物です。