美しい語り口と、美しい日本語に酔う
★★★★★
氷川きよしくんのアルバムのカバー曲「大利根無情」
を聴いて、ぜひご本家の三波春夫さんの歌唱を聴いて
みたくなりました。
できれば「俵星玄蕃」や「雪の渡り鳥」「おまんた囃子」
そして「東京五輪音頭」あたりも入っているものを…と
欲張って、いろいろアルバムを探しましたが、なかなか
これ!というものに出会えぬままでした。
この秋、リリースされたベスト版が、欲しい曲をすべて
網羅していることがわかり、amazonで即日配達注文し
自分自身へのクリスマスプレゼントにすることができました。
三波春夫さんの歌唱は、どれも美しい日本語で聴きやすい
ことにまず驚きました。浪曲で鍛えあげた喉、幾多の困難を
乗越えた人生経験の豊かさが、そのまま歌の厚みに繋がって
いるように思えます。
「歌謡浪曲」というのは、携帯の歌系サイトの都合からは
思い切りはみ出している尺の長さですから、恐らくはとても
絶滅危惧種のような歌になっているのでしょう。でも本編に
収録された8曲とも、絵巻物のお芝居を見るような、贅沢な
魅力に溢れていて、本当に聴き惚れました。
後半8曲の昭和を代表するヒット曲の数々も、耳になれた
曲ながら、どれもしっかり向き合って聴くと、卓越した
歌唱力に唸るばかり。明るい笑顔の三波春夫さんの姿を
脳裏に浮かべながら、これだけの歌手がこれからどれだけ
出てくるのだろうかと思うほどでした。
三波春夫さん、村田英雄さん、浪曲出身のお二人の
アルバムに、この三ヶ月の間に出会い、ますます歌謡曲
演歌が好きになりました。
簡潔だけれど心に届く詩、一度聴いたら忘れられない曲、
日本人の血を騒がす編曲、そして素晴らしい歌い手...
そのどれもが欠けても歌い継がれる歌は生まれてこない。
心に響く歌にこれからも出会いたいものとしみじみ
思いました。