「剣豪将軍義輝 」の続編。しかも、多くの登場人物が共通で、前作のエピソードを知らなければ正直？？となる部分も多い事から、前作は必読。
　前作（傑作！）読了後、前作の余韻や、もはやおなじみとなったキャラクターの更なる活躍を期待するが・・・残念。
　前作で新たな人物像で描かれた有名武将は、今作では平凡かついつのまにか「暗黒面」に堕して見る影も無い。「ライバル」かつ「強敵」も、終盤まで自然災害のように暴れ回るがあまり必然性を感じられない。キャラ立ちしないまま抹殺されるキャラ多数、さわやかな主人公とあまりにも対照的な酸鼻描写も健在なので、一応ご注意を。
　せめてラストのカタルシスを、との期待も・・・さしたる伏線も無しに登場する「デウス・エクス・マキナ」的人物でぶちこわしに。
　せっかくの長さが生かされていないのは惜しい。「過ぎたるは・・・」を地で行く作品。

この作品を「時代小説」「歴史小説」という前提、先入観で読むと、読み違えます。
ご注意ください。
司馬遼太郎でも、池波正太郎でも、藤沢周平でも、宮部みゆきでもありません。
強いて言えば、隆慶一郎、
むしろ、
「小説は花も実もある絵空事」と主張した柴田錬三郎の系譜ではないでしょうか。
これは、それらの「伝奇時代小説」の系譜に、宮本昌孝らしい爽やかさを充分に込めた作品だと感じました。宮本昌孝は好きな作家ですので、たっぷり読めて面白かったです。
ですので、みなさんのおっしゃるように長いのは確かですが、長すぎるという印象はありませんでした。
読んでいる間中、例えば「眠狂四郎シリーズ」、例えば「鬼平シリーズ」のように、この世界がずっと続いて欲しいとさえ感じました。
宮本昌孝５３才。多作な作家ではありません。
でも、私は、この「じっくりしか書けないんだろうな、この手間の掛け方、執筆ペースでは、きっとたいして儲かっていないだろうにな」と感じる、生真面目そうな、そして爽やかさにこだわる物語作家が好きです。
この作品にも満足していますし、それ以上に次作の期待もしています。
いわゆる「冒険活劇」を荒唐無稽、邪道、きれいごとと退ける方は、不快な気分になるのかも知れません。それもわかります。好き嫌いがあるのかも知れません。
（作者および読者のみなさんに失礼がありましたら、お許しください。）

『剣豪将軍義輝』、掛け値なしの傑作です。
歴史小説を読んで初めて「この武将に仕えたい！」と思った。

その続編にあたるのが本作。
残念ながら、やや期待はずれ。

悪いところは、４つ。
・時代が悪い。
信長の死から秀吉の天下統一、
うんざりするくらい多くの作品で書かれてきた時代です。
・敵がしつこい。
前作からの「あの人」、本作登場の小野善鬼やマヌ、ヂャオファロン、
うんざりするくらい執拗に主人公に仇をなし続けます。
松永久秀もひいてしまうくらいに。
その結果が、二段組で1000ページ以上というボリューム。
・主人公のキャラクターが良く分からない。
結局、義輝抜きには語れないキャラクター。
・大事なところで唐突な展開が多い。
極めつけは、ラスト。。。
まさかあんな結末が・・・

と、悪いところばかりを挙げましたが、
「魅せ場」を作れる作家であることも事実。
特に、圧巻は本能寺。
「我が覇業を継ぐか、海王」
本作きっての名場面です。

最も懸念すべきなのは、
本作を最初に読んだがために、『剣豪将軍義輝』を読まない人が出てしまうこと。
どうか、まず『剣豪将軍義輝』を読んでください！
そして、面白かったら、本作にチャレンジしてください。
読む順番を間違えないで！！！

　上下二段組みで、上下巻合わせて千頁余りの大作で
す。それでもいったん、主人公・海王（ハイワン）の数奇な
運命に憑かれてしまうと、他のことに手がつかぬまま最
後まで読み通すことになってしまうでしょう。
　伊藤一刀斎に柳生宗厳、そして服部半蔵など名だたる
武芸者、忍者が主人公らと幾重にも入り乱れて闘い、合
わせて織田信長、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康それ
ぞれの天下取りの成否が進行する展開は、つまらないは
ずがありません。
　父、将軍足利義輝の義人ぶりが主人公に蘇り、そのま
まライバルの熊鷹と対決するラストの盛り上がりも見事
です。ただ、それ以上にわたしは本能寺の変の記述に、
圧倒されました。迫り来る炎と明智勢の武士に囲まれな
がら、凛々しく死に行く信長の姿が記録映画を観るかの
ように眼前に浮かびました。並々ならぬ筆遣いだと思い
ます。

〔付記〕　本書に登場する伊藤一刀斎を主人公に据えた
剣豪小説がでました。（好村兼一『伊藤一刀斎』上下 廣
済堂出版）これまでの剣豪小説のように求道者ではなく、
武芸者として描き切っているところは、好感がもてました。
ただ、フィクションとしての架構力が乏しいので、星はひ
とつかな。ご参考までに。 (2009/12)

時代小説、歴史小説好きの団塊層をねらっての発行意図だとおもいますが
まず入れ物が大きすぎます。
薄めすぎただし汁に分厚い衣のエビ天を乗せたてんぷら蕎麦...

膨らませ方のたりない内容を無理やり上下巻の大作に作り上げたがために
無為な史実説明が多くせっかく盛り上がりかけたかと思ったら
水を差すかたちでクドクドと状況説明が続きます。
要するにページ稼ぎです。

「テンペスト」で痛い思いをしたので上下買いは控えておいたのですが
作中、上杉兵庫がなかなか魅力的なので上巻の中ほどで下巻も買いました。
が「テンペスト」同様、こちらも上巻後半で失速、放置状態にあります。
悪夢ふたたびです。

しいて読めば読めないこともないのでしょうが
＞テンペストは下巻も無理やり飛ばし読みしました(-"-)
魅力的な本は日々出ますので こうまで間延びしてしまったものは
だぶん以後も 手に取らないだろうと思います。