ところどころ間違いがあるので、あまり細部に拘らないほうが良いと思います
★★★☆☆
数学に殆ど縁がない人を対象にした本です。逆にこういう本は難しいと思います。厳密に過ぎれば読んでもらえず、初歩的に過ぎれば説明がまだらっこしいと言われてしまいます。
ところどころ説明に間違いがあります。初心者はちょっとしたことで躓きやすいものです。真剣な人ほど一字一句の意味を理解しようとします。そして理解できないのは自分に能力がないからと考えがちです。その意味で誤解を招く表現が多いのが気になります。
例を挙げます。
ページ26から27。「このように小さく区切っていくことを微分といいます。」、「アナログの音楽を微分すればデジタルの音楽CDになります。」、「積分は、微分の反対にデジタルをくっつけてアナログにするものです。」
微分の定義が間違いです。微分とは、ある量がある微小量だけ変化したとき他の量がどれほど変化するかです。デジタルとアナログの関係と微分と積分の関係を混同しています。微分も積分も一般的には連続した値、アナログ量です。
ページ34。「(コンピュータは)たて軸の数字と横軸の数字の関係が式で表されていないと線を引けない」
解析解が出せないと言っているのでしょうか。関係が解析関数で表されていなくても人間がする以上の精度で線を引けます。
ページ44。「この曲線さえあれば積分できます」
もとのガタガタの線でも積分できます。滑らかな曲線でないと厳密な意味での微分はできません(数値微分は可能)が、積分は階段状のグラフであろうと、あるいは線が途切れていたとしても、可能です。
ページ45。「コンピュータがたて軸と横軸の関係をうまく式で表し、グラフを書き、しかも積分までやってくれます。」
ページ34の記述と矛盾します。あるいは、著者は式で表すから積分できると考えているのでしょうか。式で表すのもグラフを描くのも積分するのも独立した動作です。
ページ56。「数学の世界では、このように複雑でごちゃごちゃしたものを、すっきりとして単純なものに変えることを正規化といいます。」
正規化の意味を勘違いしています。たとえば統計学なら、データの値から平均値を引いてさらに平均値で割って、平均値がゼロ、標準偏差が1となるようにすることを言います。
ところどころ説明に間違いがありますが、この本は微分や積分を理解することでなく、親しむことを目的としたものでしょう。理解できないところがあったとしたら、読者はひょっとして説明が間違い、あるいは不十分かもしれないと思って読み進むと良いと思います。
なお、他のレビューで指摘されていましたが、集合の説明は特に間違いを発見できませんでした。コラム2の「BがAの条件」あるいは「なんらかの特徴を持ったものの集まり」のことでしょうか。前者は少し変ですし、後者は単に「ものの集まり」が良いと思いますが、間違いとまでは言いきれません。
星三つは甘いかもしれませんが、他に同じ内容で初心者向きの本がありません。目的を考えればこれで十分かもしれません。とは言え、トヨタその他の企業が微分や積分を経営に活用したから大成功した云々は、ちょっと言いすぎです。微分や積分を知っていると経済学やマーケティングの理論が分かりやすい程度です。
デジタルアナログ表現で微積分をやさしく説明してくれる! 内山氏の好著
★★★★★
微分積分と聞くと理科系の人あるいは一部の数学の得意な人を除いて「それが何を意味していて一体何の役に立つのであろうか?」という人が多いのではないだろうか。本書はこのような素朴な疑問に対して経営コンサルタントとして活躍されている内山力氏が明快に答えてくれる好著である。
本書は「微分積分がなぜ経営や実生活に役立つのか」を明快に説明してくれる。特に微分をデジタル、積分をアナログと表現されて内山氏独自の言葉で微積分を説明されているのは大変興味深い。私達は日常経営者でも個人でも普段微分積分を意識して行動していないかもしれないが、結局はビジネスもそのように行動している事を本著から理解できる。
ビジネスパーソンにとっても微分積分の本質をマスターして、仕事に役立てられれば会社の経営その他でも説得力が増すのではないだろか。今まで数学にあまり馴染まなかった人でも本書を読めば興味を持てると思われる。コンパクトで読みやすく経営や数学に興味を持たせてくれる効果の大きい書物である。微分積分の本質を経営と結びつけてやさしく説明された内山氏に敬意を評したい!
数学に強い知人にまず読んでもらってください
★☆☆☆☆
微積になんどかつまずいていて、新たなとっかかりになれば、と思い購入しましたが、本題に入る前の初歩の集合の記述の部分で「初心者が見たら明らかに誤解して理解してしまう記述」を発見しました。
(集合の初歩は縁があって勉強した直後で、「教えてGoo」を使って確認もしてみました)
上記の点もあわせて出版社にこの点を含めて「誤解を招く表現がないか」問い合わせをかけてみました。
対応してくださった編集関連の方は親切な対応でしたが、作者からは「問題はない」以外の返事は返ってきていないそうです。
近くに数学に明るい知人がいないため、これ以上内容の検証ができませんし、間違った知識を身につけるのが怖いので、この本を読むのはもったいないけど、保留にします。
既に購入されている方は、数学に強い知人がいたら一度本を読んでもらって「初心者に誤解を招く表現」がないか、確認をしてもらうことをお勧めします。
経営を語るな までは言わなくても
★★★★☆
微積分を知らない人でも図と簡易化した例えを使って
分かりやすくビジネスを説明した良書。
経営層向けと言うよりは、現場部門向けのイメージ。
例えば…営業,資材・購買,企画,製造などの部門。
自部門を分析することで、他部門や会社全体のことが
少しでもあかるくなるのではと言う印象を持った。
「経営を語るな」まで言わなくても…と思いつつも、
標準偏差の説明は、数学の教科書とは異なり
非常に分かりやすい例えを用いているので
自分の中でも活用してみようと思えるものだった。
数学、統計学の基礎知識を利用した経営管理、業績、目標管理入門 優良書です
★★★★☆
本書の微積的思考法は、新人社会人、中堅社員、マネージャー、経営者のいずれの層にもお奨めできる非常によくまとまった良書。
-新人には全体目標、個別目標の定量化、数値化の必要性、有意性を教え、今後の仕事の軸とさせる必要がある。
-中堅社員には、再度この基本(=定量化、数値化)を徹底させる意味がある。
-マネージャーには部門目標と各メンバーの業績管理、更にコスト管理、経営分析も手法を徹底させねばならない。
-経営者には財務の視点で経営戦略を立案する必要性を再度学ばせねばならない。
上記の全てに役に立つのが本書で言われている、微積的思考である。これは初歩的な微積、統計学に覚えがあるだけで感覚的にそのイメージが把握しやすい。更に原価計算、経営分析にも応用できる知恵が満載されており、各現場で使うほどにその効果が表れてきそうな本である。そのため、原価計算、財務などを勉強した経験がある方は理解がスムーズであろう。またこれにOR等を加えることにより、経営工学入門というタイトルも出版できそうな感じがした。