魅惑の迷宮へ、ごあんなーい
★★★★★
オリジナル・アルバムの復刻が進み再評価が高まっているザ・ピーナッツのコンピ盤です。
長いキャリアと膨大なレパートリーを持つゆえ、「1枚や2枚でPのベストなんか作れるか!」
という制作者の叫びが聞こえてきそうです(大げさ)。
音楽を、iPodに入れるための小道具としか考えていない向きには、「古い」「ユルい」あたり
の形容詞で片付けられてしまうでしょう。しかしその主従関係が逆転すると、ピーナッツの
良さが段々分かってきます。ジャズの影響が濃い初期、上品な色香の漂うムード歌謡、
お得意の海外ポピュラーをやりたい放題にアレンジしたカバー…。
個人的には、原作者であるH.カーマイケル氏も絶賛したと言われている「Star Dust」の
麗しさにほれぼれします。
当時レギュラー出演していたバラエティ番組では毎週クロージングテーマとして唄っていた曲
ですが、このようにオフィシャルな形での録音が残っていて本当に良かったと思います。
ちょっとコブシが入っているのも、また味です。
若い方でしたら、美しいボサノヴァ「いそしぎ」「Autumn Leaves」や、クールな8ビート
で料理された「My Funny Valentine」に度肝を抜かれるのではないでしょうか。
正直、やらずもがなの曲がないとは言いませんし、「どうしてあの曲(ex.「ガラスの城」)
がオミットされるの?」と思う面もあります。が、それはベスト盤の宿命。所詮この4枚
でもピーナッツを完全に理解することなど、到底できません。
この壮大な迷宮に馴染めないなら4枚組の本作で逃げ出せばよいし、留まり続けたければ、
有り金握りしめて紙ジャケリマスター盤を買いに行けば、まだ間に合います。
残された時間は僅かですが。
それにしても、ジャケ写の憂いを帯びたお二方の表情の、なんと艶めかしいこと…