この録音で驚くのは、オケの目の詰んだアンサンブル。一糸乱れが無いほど磨きに磨いたアンサンブルで、ジュリーニがいかにオケを掌握し切っているかが良く解る。細部にいたるまで丁寧な再現を聴かせるのは後のジュリーニと同じで、純器楽的な(?)生真面目さでオケを纏めてしまう点など、ずっと後のDGの「ファルスタッフ」の録音にも通じているようにも思う。
聴き始めると、一気に最後まで聞かせてしまうのは、早めのテンポ設定もさることながら、実はこの丁寧さにあるのではないだろうか。
ただ、オケに多彩な表現力を発揮させるような演奏ではないので、E.クライバー盤を聴き込んだ向きには、陰影感のある表現や感興が不足するように思われるかもしれない。
で、それを補うのがシュヴァルツコップフの伯爵夫人。第2幕冒頭のアリアや第3幕のアリアなど、それまで希薄に感じられた情趣が彼女の歌が始まった途端に漂ってくるところなど、流石である。
他の歌手陣は、好みが分かれるところか。個人的にはモッフォとコッソットは彼女達の本領ではないと感じたが……。