インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

カフカ寓話集 (岩波文庫)

価格: ¥693
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
Amazon.co.jpで確認
値打ちアリ ★★★★★
池内氏の訳がこなれていいし、カフカの味も香りも堪能できる。これから、長い長い間読み継がれる文庫本になるでしょう。
巣穴の音について ★★★★★
ひょっとして音の正体は巣穴の主の幻聴ではないのか? むろん、その可能性も無視できないだろう。つまり、音は遠いところでは弱く、近いところでは大きいのだから、つねに一定の距離を保っていること、主と一緒に移動していることも考えられる。確かに、あそこまで考えておいて、そら耳だったというのは、受け入れがたい仮説でもある。しかし、ときには思いきって、思考を変えてみることが、解決に通ずることもあるのだ。さしあたっては、幻聴からのがれる方法を考えねばなるまい。幻聴というのは疲れからくるものらしいから……
いや、しかし、外に耳を済ませると静かだったのだから、やはり幻聴ではつじつまが合わない。とすると、やはり鼻で掘る生き物のしわざなのだろうか? しかし冷静になってみれば、そのような生き物はとうてい考えられないだろう。いや、しかし、万が一ということもあるし、もしかしたら、皆が言っていた地中の生き物なのかもしれない。こう考えると、やはり、この仮説がいちばんもっともらしいように思える。とすると、主が正しかったわけだ。しかし……
カフカの本性に迫った貴重な短編集 ★★★★★
カフカの作品は全て寓話なので、「寓話集」と言う題名はどうかと思ったが、内容を見ると1頁の作品や動物が主人公の作品が多く、確かに寓話性が高い。各編の寓意を想像する事は楽しみではあるが、正解の数は読者数分あるので、そのままカフカの世界に浸った方が良い。カフカ自筆の挿絵が7点収められているが、これ自身寓話のようである。

冒頭の「皇帝の使者」は、僅か2頁で時空の果てしない拡がりのイメージと"無意味"を表現した傑作。使者を永久に夢見て待っている「きみ」とは読者なのかカフカ自身なのか。「ある学会報告」の人間化した猿は、カフカの"変身"願望とも思える。「アレクサンドロス大王」に対する関心はカフカの中でどういう位置を占めていたのか(野心家の証 ?)。「アブラハム」、「メシアの到来」を読むとカフカの皮肉屋振りが窺える。「こうのとり」のように、何故その動物・鳥が主役になるのか分からないまま、唐突に結末を迎えるパターンの作品も多い(「貂」、「巣穴」等)。「獣」は「短編集」中の"オドラデク"同様、不可解な動物を精緻に描くと言う無意味さの魅力がある。「柩」は巧い。僅か2頁で人間模様を描きながら最高級の怪談に仕立て上げている。「掟の問題」は珍しく率直な物言い。「よくある事故」はサラリーマンの日常生活の寓話化とも取れるが、カフカらしく意図不明。「最初の悩み」は孤高の芸術家の野心と苦悩をサーカス芸人に託して描いた寓話らしい寓話。「ちいさな女」は"オドラデク"の不条理性に性的要素を加えたものだろう。「断食芸人」は、題材自体の存在が怪しいが、この芸人の矜持がカフカの矜持そのものと言う事か。「歌姫ヨゼフィーネ」には周囲の無理解と闘うカフカの自尊心が読み取れる。

読者が自由に解釈できる点がカフカの作品の魅力だが、本短編集は意外とカフカの本性に迫っている気がする。カフカを知る上で欠かせない貴重な短編集。
カフカ寓話集 ★★★★★
カフカは恐ろしく真面目なユーモリスト、観察者である。彼は生活において感じられる些細な違和感を几帳面に捉えて膨らませ、変身させるのだ。そのため、多分に幻想的な彼の作品には、生々しい現実性も備わっているのだろう。

「カフカ短篇集」のレビューにも記したが、この書でもやはり、掌編に引き込まれるものが多かった。 比較的尺の長い『巣穴』に限って、短篇集収録の『火夫』と同じく自分には冗長であったが、他は大粒と小粒の入り混じった秀作ばかり。取り分け気に入ったのは、『皇帝の使者』、『メシアの到来』、『こうのとり』、『走り過ぎる者たち』、『よくある事故』、『十一人の息子』、『歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族』。つよい中毒性があるようで、時間が経ってから何度か読み直した。 また、本書に収められているカフカの描いた口絵も非常に素敵。

短篇集を通読する際にも思ったことだが、池内紀さんの訳がすばらしい。カフカのユーモアを遺憾なく引き出しているように思える。
どれもが不思議な味を持つ短編集 ★★★★☆
訳者の解説によると「寓話集」にとくに強い意味はないとのことだが、動物を擬人化し、なんらかのメッセージや皮肉を込めた短編を集めていることは間違いない。全部で30編が200ページちょっとに収められている。最も短い「アレクサンドロス大王」に至っては注を含めてもわずか6行しかない。どう解釈すれば悩むような作品が多いが、どれもが不思議な味を感じるのがカフカの真髄か。「巣穴」のいらいらするような思考の螺旋ともいえる文章にも引き込まれる。