画一的に見られがちな若者から多様性を発見しようとする姿勢、無感情と思われがちな若者から今にも溢れ出しそうな感情をすくいとろうとする姿勢、そして、とにかく乾いた現代人を、映画のスピード感で誤魔化すことなく、消えてしまわないよう丁寧に描こうとする姿勢、もはや「ディス・コミュニケーション」なんて死語?と思ってしまうくらい、本作が長編デビュー作となる伊勢谷監督の姿勢は、柔らかく、繊細で、優しかった。
「カクト」は、1997年に中川崇、藤元明、伊勢谷友介の3人で結成された、グラフィック、立体、映像、インスタレーションなど多岐に渡り活動するアート・チームである。注目すべきは、「カクト(覚人、覚都)」という造語の意味について伊勢谷監督自身が語った言葉だ。「目覚める人、目覚める都」に伊勢谷監督が込めた思い、「自分自身の小さな変化に気付くことが出来たら、それが未来への大きな変化に繋がる。そして、それが集まり、大きな力になっていくとき、それは都(文化)をも変えていく力になる。」と、これを聞けば、伊勢谷監督のあの真摯な姿勢も頷ける。新世紀日本映画のカタチは、驚くほど好感の持てる青年のような姿をしていたのだ。