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組曲虐殺

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 集英社
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井上の戯曲としては凡庸なできでしょう。 ★★☆☆☆
井上ひさしが,戦後日本を代表する劇作家の一人であるのは疑いを容れないと思いますが,この最後の戯曲は井上の作品としては,凡庸なできじゃないかなぁ。

この芝居は天王洲の銀河劇場で栗山民也の演出で上演されたと思いますが,残念ながら自分はこの公演を見てないので,この戯曲をきちんと評価できません。
戯曲っていうのは,上演してはじめて完成すると思いますから。

井上の戯曲は本で読んだだけでもおもしろいのですが,この作品はちょっと淡白に過ぎてとてもおもしろいとはいえない。

この前の『ムサシ』がおもしろかった(蜷川演出の上演も含めです)のに比べると残念な仕上がりでしょうか。
作品がただエンターテイメントである訳ではない ★★★★☆
井上ひさしの戯曲を上演するための劇団、
こまつ座にて2009年秋に上演された作品。
『蟹工船』小林多喜二を主人公とした作品だが
まるで日本での蟹工船ブームに背を向けるように
地下に潜った生活を軽やかに、明るく描いた
(オペラやミュージカルではないが)歌劇である。

ただもちろん井上戯曲なだけに、
作品がただエンターテイメントである訳ではない。
例えば狂言回しのように扱われる特高刑事二人も
狂言回しの役を与えられることによって
ただの抑圧者ではない組織の人間という悲劇性を
ユーモアの影に隠され、色濃く帯びるのだ。

戯曲はまず上演されて面白くなければ客を呼べない。
その上で「残っていく」戯曲は、その中に巧みに
テーマやら時代性やら作者性を忍び込ませている。
そんな実作者を一人、私たちは失った。
それはやはり悲しく、寂しい。
井上ワールド最後の傑作 ★★★★★
井上ひさしの最後の戯曲作品にしてついに小林多喜二が登場した。多喜二を他の作家が書くと言えば三浦綾子の「母」が有名であるがここに登場するのは姉佐藤チマと恋人田口タキ(文中では瀧子)そして妻とされる伊藤ふじ子である。瀧子とふじ子の関係やなぜ恋人と結婚できなかったかの理由がここで明らかになる。スパイMによる大森銀行ギャング事件の真相、多喜二虐殺に至る真相までが
多喜二以外のとりわけ当時の特高警察官によって語られる姿は井上ワールドの中の真骨頂といっていい。いずれにしてもこのような戯曲を私たちは二度とみることはできないのだ。
さよなら、井上ひさしさん ★★★★★
云うまでもなくわれわれは、客観的事実として1933年の小林多喜二の非業の死を知っている。しかし、ここに描かれた群像劇そして小林多喜二像の何と軽やかなことだろう。歴史から目をそらすことなく、事実は事実としてこれを直視し徹底的に踏破しつつも、それを怒りではなく(怒りは結局何物をも生まないことが多い)笑いへと昇華させるその手練手管。笑いこそが、希望そして未来へと結びつくことの見事な実践。井上戯曲の見事な達成。いわば、劇の構造そのものが、氏の哲学そのものであるかのようである。

なお、帯の惹句に「井上ひさし最期の傑作戯曲」とありますが、これはやはり「最後の」が正しいのでは?