日本語で書かれた唯一の古楽奏法
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現在では国際的な演奏活動を行っている日本人のピリオド楽器奏者も数多いが、この時代の音楽についての具体的な演奏方法、演奏習慣、装飾音、ピッチから音律に至るまでを体系的に網羅した日本語による研究書はこれが殆ど唯一のものだ。
特にバロック時代の装飾音は音楽表現にとって欠かすことができない重要なエレメントであり、またこの時代の特徴的な習慣だった即興演奏において装飾の良い趣味を養うことは優れた演奏家のたしなみでもあった。しかしそこには非常に煩雑で、しかも地方によって異なるルールが存在する。それについて本書では実践的な演奏方法を豊富な用例を引いて、簡潔で解り易く説明しているので専門書でありながらアマチュアの古楽愛好家にも気軽に利用できるというメリットがある。
後半では当時の音律に関する概説や伝統的な調律方法とその変遷、そして通奏低音奏法とそれを使った伴奏法やカデンツァ、さらには即興演奏についてもその理論と実例を挙げながらどのような方法が望ましいかが詳述されている。