技術力こそが長期的な競争優位の源であるというコンセプトに基づいた多くの示唆に富んだものづくりに関わるマネージャー必読の書
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本書を手に取るとまず技術とは何かという根源的な問いとその定義に引き込まれる(第1章)。特に日本企業にありがちな技術は凄いが売れないという課題についてはその定義をよく理解することが第一歩であると実感する。
各章を私の視点で概説すると
第1章「技術とは何か」:技術の定義、
第2章「本社は技術とどう関わるべきか」:長期的な競争優位としての技術の本質的意味と経営的視点(本社マネージャー)の必要性
第3・4章:保有技術の棚卸し、成功要因の特定、ポジショニングによるリスク分散手法(戦略)
第5章:技術の成熟度合いと代替の脅威への対応(過程)
第6・7章:ますます多様化する事業モデルとして必要性が高まる「技術の売買」手法(過程の特論)
第8章:CTOの役割と組織体制のあり方(組織)
第9章:モチベーション維持の方法(経営資源)
第10・11章:質的な評価の方法と短期的な成果への対処方法(評価・学習)
となる。
技術経営の流れがよくわかり、ガイドブック的な活用も可能である。
その流れにおいては V-SPROLモデル、すなわちVision(美ビジョン),Strategy(戦略),Process(過程),Resource(経営資源),Organization(組織),Learning(学習・評価)のフレームワークをなぞっていくと理解の助けになるだろう。
また特に第10・11章に解説されている「開発技術の評価が量的評価に陥ることに警鐘をならし、質的な評価尺度を採り上げている」部分に独創性・新規性を感じる。
計測できることは成し遂げられる、What gets measured gets done.の創造性の評価項目を提示しているのである。
技術力こそが長期的な競争優位の源であるというコンセプトに基づいた多くの示唆に富んだものづくりに関わるマネージャー必読の書である。