魂の原初を求めた人たち
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著者は、長い間、霊的なモノ・コトにかかわり、芸術・学問・宗教の異なった領域から、それらを追及してきたそうです。
ヘッセ、ブレイク、ゲーテ、宣長、秋成、篤胤、稲垣足穂、イエイツ、ハーンらの霊的体験と思惟を、彼らの作品を詩的に解説しながら紹介しています。著者によれば、彼らは皆、人間の原型を探求する旅人です。存在の根源としての魂のアルケオロジーを追い求める探求者であり、著者は自分もそのような旅人―探索者の末端につらなっていると自覚しており、それを実況中継するようなつもりで書いたとのことです。
著者は、生の多様な生の中に立ち現れる潜在的で普遍的なモノを見透す想像力を認め、霊的人間たちが求めた生と思想を理解し自分の霊性を通して受け継ぐことが大事だと考えています。
著者も含め、これらの人々に共通するのは、単に知的ではなく求道的な魂の実存的な遍歴を生きる軸として重視し、認識手段としては理性よりは詩的で直感的な感覚の優位を認め、宗教現象としては、純粋な神的なものだけでなく、おどろおどろしい魔的なものをも認容する心の傾向があるようです。
対象的な思惟で、真偽を判断するのは困難な世界ですが、著者が実際に現地に滞在したことがあるケルトの宗教風俗と日本の古神道との類似の話が、一番面白く引きずり込まれます。文章は巧く文学作品としても楽しく読めます。