浅草博徒一代: アウトローが見た日本の闇
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時代は大正から昭和、移りゆく世相を背景に、浅草一帯に勢力を張った博徒の伊地知栄治が物語る愛と波乱の生涯。15歳で女を追って上京し、やくざの道に入った男が歩んだアウトロー人生。官憲の目を盗んで滑るもうろう船、足尾銅山の大反乱、恋と駆け落ち、焔の中を逃げまどった関東大震災、中国国境の兵役と脱走計画、そして大空襲と艦砲射撃下の博打。博徒同士の喧嘩で人を殺めて入った前橋と、覚醒剤の闇取引に巻き込まれて送られた雪の網走刑務所。所内で他の囚人たちから聞いた、知られざる事件の真相の数々。波乱に満ちた栄治の生涯は、人生の最後に出会った彼の主治医のために、永く世に語り継がれることになった。
茨城県土浦市で40年以上開業医をしながら、患者の老人たちから聞き書きをして多くの著作を発表している佐賀純一は、老いた栄治の最期を看取るかたわら彼との会話を録音して、膨大な量のテープからこの小説を書き起こした。1989年に初版が発行され、1991年にはジョン・ベスターによって英訳された。そして現在は10カ国語に翻訳されて、全世界で読まれ続けているベストセラーである。
-“禅の美に代表される古風で清潔で品のあるステレオタイプなニッポン像を打ち壊す、残酷なまでに貧しかったかつての日本社会を紹介”(ヘラルドトリビューン紙 1991年12月12日)
-“著者がこの本で、殺人ややくざ同士の抗争といったセンセーショナルな事件ではなく、戦前の日本の社会や文化を伊地知の言葉を通して今に伝えることに重点をおいているのは明らかだ”(ワシントンポスト紙 1991年8月11日)
国内ではすでに絶版となっているため、このたび電子書籍版として再販されることとなった。細かな加筆修正が加えられ、さらに著者の父が生前にこの作品のために描き下ろした挿絵十数点を加えて、浅草博徒一代の最終完成型となっている。