外国語を身につける前提を学ぶ
★★★★★
外国語を話す。日本人の多くが憧れながら、しかし実現しないものの一つです。とりわけ、ひたすら単語を覚える作業や、小難しい文法、そして高額な会話のレッスンが、日本人の外国語学習を阻んでいると思います。しかし、それらの学習以前に、外国語を話す上で必要なスキルがあるとしたら。それは日本語の力です。
例えば英語の手紙を書こうと思ったとき。一度日本語で原稿を書いて、それをそのまま英語に訳してもうまく訳せません。英語には主語を必ず明記する、5W1Hを明確にするなどの日本語にはない特徴があります。また相互の理解を前提にした曖昧な表現(「ほら、あれ」など)もなく、具体的に記述されます。そのほか、対話の技術としても相手に理解しやすく伝えるためのナンバーリングやラベリングというものがあったりと、言語やコミュニケーションに対する考え方がずいぶん違うことが紹介されます。これらの違いを考慮しないと、いくら英語の文献が読めても、対話をすることは難しいでしょう。本書は、外国語を身につけるための「前提を学ぶ」日本語レッスンとして、大変有意義なものだと思います。
国際化対応だけでなく、心の中の解決にも役立つ。
★★★★☆
論理的具体的な思考方法や表現方法が、国際化を生きる我々、さらに子供たちにとって必要なことは当然だと私も考えます。しかしながら論理的な思考が必要な理由は、それだけではないと思います。そのことがこの本には欠けていて、誤解を生むもとにもなっている気がいたします。
日本人どおしであっても、片方だけが常に「察し」なければならないような関係が多数存在します。
相手のことを察する気持ちになるには、日頃から労を惜しまず、コミュニケーションを具体的に取っている関係が前提だと私は考えています。論理的な思考方法を身につけることは、日本人どおしの古来の察しの文化にも資するはずなのです。
また、一人で悩むような場合も、つまるところ何を悩んでいるのかわからない日本人は多数存在します。感傷にひたることは素晴らしいことだと考えますが、解決したい場合は、論理的具体的に考える癖が、悩める人を救うようにも思います。
以上二つのことが、外国語だけでなく、日本の中に置いても日本人の心にとっても論理的具体的思考が大事だと考える理由です。
日本語は曖昧なのか?
★★☆☆☆
本書のタイトルでは、英語でなく外国語と大きく対象を広げているが、実際には中国語は含まれているのかなど気になる点はある。また、文化の領域に踏み込んでいるため、例え英語に限定しても、イギリスとシンガポールはずいぶん違う。この本の内容がどこの国で成り立つのかには注意が必要である。
この手の気になる部分に目をつぶって、筆者が言わんとすることを汲み取ると、筆者の主張は、
- コミュニケーションにおいて、日本人は曖昧である。
-- 質問するときに、何を聞きたいのか分からずに質問する場合が多い。(例えば、2ch的な「これってどうよ?」という質問は、質問者自身何を期待して質問しているのか分かっていないであろう)
-- 質問に答える際、根拠を具体的に示さない。例えば、あの映画はスキか?と聞かれ好きと答えた時、好きな理由を示せない。
- 一方、(筆者の言う)外国人は、このような曖昧さに慣れていないため、言語の問題ではなく、コミュニケーションの際の心構えの問題で、日本人の話す外国語は通じないという。
また、続編とも言うべき「外国語で発想するための日本語レッスン」では、曖昧な考え方を直すトレーニングとして、Critical Readingを勧め、そのやり方を説明している。
これらの本を読んで、かつてボストン市内に住むイギリス人に「なぜ市内に住むのか?」と聞いたとき、"easy to go school, easy to go shopping, easy to go theater"と答えをもらい、すごく具体的に答えるもんだなっと感じたことを、思い出した。このように、彼ら(イギリス人)が示す理由は、別に大したものではないことに注意が必要である。日本人的な感覚では、「そんなもの言わなくてもいいよ」的なことをいちいち言うという程度のことである。
外国語云々もそうだけど
★★★★★
それよりも、ロジカルな思考法や、相手に誤解なく伝わるようにものごとを整理して話す、という部分で非常に参考になる内容だと思います。説明力とかコミュニケーション術のベーシックな部分を理解し強化するのに最適ではないでしょうか。
書名に「外国語〜」とついているために語学に興味がある人にしかアピールしないかもしれませんが、それではもったいない内容。ビジネスパーソン一般にも非常に役立つはずです。
外国語習得のためには母語の基礎が重要
★★★★★
「日本語で表現できないことは外国語で表現できない」、
「言語技術は自然に身に付くものではなく、スキルとして身につけるもの」
という前提を持ち、外国語習得のためには日本語の力をどのように
身につけていかなくてはならないかを示した良書。
英語ができない日本人を合言葉に一斉に攻撃を受ける日本の英語教育。
しかし、言語という視点では母語である日本語をしっかりと身につける
ことが英語上達につながるという「急がば回れ」の考えのもと、日本語の
言語技術を具体的にどのように身につけていくのかを示してくれている。
近年日本語教育の重要性が言われるようになってきたが、英語教育と
国語教育の連携を図るためには必読しておきたい本。