経済も医療もしらない人にはいいかもしれないが。
★★★☆☆
医療経済学の入門書といいながら、前半の大半は、経済学の説明に終始しております。そして、後半の過半数は、医療業界の説明に終始しております。「医療経済」に限ったコンテンツは、感覚値で、全体の1/4ほどです。先日ISPOR(http://www.ispor.org/)のセミナーに参加してきましたが、医療経済から入りたい人は、ここのサイトの無料のPublicationを読んだ方が、より、「医療経済」にどっぷりつかれるのでは、と思いました。(すべて英語ですが・・・。)
書名とおり、医療経済学の入門書として良書。
★★★★★
医療経済学は、領域としては決して大きな広がりを持つものではないが、分析する角度や分析者の立脚点などにより、同じ事象の分析結果が大きく変わりえる、じつに興味深い領域である。そのため、1人の人物によって書かれた本書が、初心者に程よく医療経済の多様性を説明しえるかには、やや疑問があるが、しかし、1人の著者によってかかれたからこそ全体を貫く価値観もありえる。本領域を学ぼうとする人には、一度は読んでもらいたい本である。
得難い視点
★★★★★
前半はミクロ経済学の概説である。さすがにこの部分を単独に取り出した場合には不十分と言わざるを得ないが、以下の部分を読むための最低限の知識を読者に与えているという点は、好感が持てる姿勢である。読者は経済学の予備知識に乏しい医療従事者であることが予想されているからである。
後半は各論で、現在の日本の医療制度の概観、他国との比較、実際の経済学的分析といった、医療経済学からみた日本の医療の概観がつかめるよう配慮されている。他のカスタマーの方が記していらっしゃる通り、多少力点の置き方に項目間で差があるが、それは仕方がない気もする。「重要なこと」と「そうでないこと」との評価は、倫理や価値判断もからむこの分野では客観的に不可能な気がするからである。
本書の一番の特徴は、「実際の医療に携わる医師によって書かれた医療経済学の本」である、ということだ。最近は医学部出身で経済学や法学に専攻を転ずる方も少なくないが、実際の臨床の現場を知らないまま学際的な分野の「専門家」と称して活動している場合もある。著者は実際の臨床に携わっておられる方であり、現場を知っている強みが最大限に生かされていると感じる。これは他書に得難い利点である。
経済学の視点から日本の医療を考えてみたい方には強く推薦したい。
期待を込めて
★★★★★
少子高齢社会を迎え医療費抑制が叫ばれて久しい。その外圧からかその専門性から内容が明らかにされてこなかった医療に対しても最近は公開の場で議論がなされるようになってきたように思われる。その様な議論を進める際、資源配分を考える経済学的視点で医療を考える必要がありこの本のタイトルでもある医療経済学という分野の認知度も高まりつつある。
この本以前にも医療経済を銘打つ本はいくつも出版されているが、多くは制度の解説や医療制度はかくあるべきという思想に始終するものか、若しくは経済モデルを扱う専門書が多かったように思われる。この本では簡単な分析ツールとしてのミクロ経済学から入り、医療における特殊性が解説されている。後半は医療制度に関する解説であるが、細部に経済学部教授でありながら現役医師という著者ならではの見識が散りばめられ、その語り口も独特で面白い。
残念なのは入門というタイトルがついているものの、著者の思い入れがある部分とそうではないだろうと思われる部分とが明らかに区別され、一部は冗長、一部は物足りなさを感じる点である。真の入門書たるべく次期改定版での対応を望みたい。
MRの参考書になります
★★★★★
製薬企業の営業担当マネージャーとして勤務しております。業務上、病医院の医師や薬剤師、事務担当者への医薬品紹介や部下への指導のため、医療全般に関連する参考書を必要としています。これまでは、薬剤を中心に疾患や治療に関する書籍に重点を置いていましたが、近年の医療費高騰に起因する度重なる医療制度改革などの影響により、経済的な視点・知識の研鑽が極めて重要な課題となってきています。しかし、経済学となると畑違いであり、小難しい数式や用語など馴染みにくいもので、つい敬遠しがちでした。本書は、実際に臨床に携わっている医師によって書かれた医療経済学の教科書であり、難解な経済学の用語・数式を使わずわかりやすく説明されています。欧米諸国と異なる、独特な日本の医療経済の概要を理解するのに最適の参考資料となります。