音川ちゃんたたかう
★★★★★
辛いけど辛いばかりではない,楽しいけど楽しいばかりではない。そんな現実を書かせたら超一品の素敵な作家の第2作です。
荒川のそばの工場で,高校を卒業したばかりの音川ちゃんは理不尽と向き合いながらも,そこそこ楽しく過ごしています。
きゃぴきゃぴしたところのない,ベテランの雰囲気を持つ未成年。
でも,心の中は社会に対するまっさらなもので,音川ちゃんを消耗させるいろいろに対して真っ向から受け止め,そして抵抗し,また自分をみつめとめまぐるしく,心は常にフル回転です。
酒乱の先輩からのセクハラや社会の中の嫌がらせ,現実はなかなかに過酷です。
(レビュアーはもういいおばちゃんなのですが,わたしゃ世間知らずだったよ。過酷な女子の現場だなぁ。法律や組合でもっと守られているものだと思っていたです。)
そんな中で目を大きく見開いたまま,死んだラクダの目にならずに過ごしていけるのか,彼女の奮闘を応援して一息に読み終えてしまいました。
解説を読んで,かなりの部分は著者の体験に基づいているとの種明かしに,遠野りりこさんがとても好きになってしまいました。