今の世の中にある醜さや不幸に負けない明るく逞しいヒロインが健在の第3弾です。
★★★★☆
アメリカ・メイン州の愛すべき田舎町ティンカーズコーヴを舞台に活躍する主婦探偵ルーシー・ストーンのシリーズ待望の第3弾です。今回は楽しいハロウィーンを間近に控えた町に放火事件が続発し遂に犠牲者が出る謎が描かれます。
町でも一番古いホプキンズ屋敷が全焼し、焼け跡から焼死体で発見された女主人モニカはルーシーと夫ビルの古い友人でした。ふたりは突然の知らせに悲嘆に暮れ、素人探偵ルーシーは絶対に犯人を見つけてやると心に誓い、産まれたばかりの赤ん坊ゾーイの育児に追われながらも、夫に内緒でいつもの調査活動に乗り出します。
ミステリーの興味としては作者は怪しい容疑者を多数登場させて的を絞り難くしてレッド・ヘリング(偽の手掛り)も巧みに仕掛けられていますので、最後に明かされる意外な真相は読者をまずまず満足させてくれるでしょう。ルーシーは今回も名探偵というよりは行動の人で、運良くあわや死の危険から間一髪救われますし、更に人徳の致す所か結局は犯人の方から名乗り出て来てくれます。これも粘り強いルーシーが犯人にプレッシャーを掛ける才能に長けているからでしょう。それから、本シリーズの一番の魅力である人情味溢れるストーリーは本書でも健在です。ルーシーが四人目の子供の娘ゾーイに注ぐ深い愛情、親離れして行く悪戯盛りの息子トビーへの心配、子供が四人いても熱々に愛し合うビルとルーシー夫妻の幸福な姿とお馴染みストーン一家の近況に加えて、本書で注目すべきは頑固なお年寄りミス・ティリーのエピソードです。自分の非を認めない老女が窮地に立たされ、遂に心を開いて素直に歩み寄る潔さが心地良く爽やかな印象を残してくれます。このシリーズの良さは、悲しいけれど今の世の中にある醜悪さや不幸な出来事に負けないで、決して暗くならず前向きに立ち向かうヒロインの明るさにあると思います。これからもストーン一家とルーシーの活躍に大いに期待しましょうね。