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物語 ドイツの歴史―ドイツ的とはなにか (中公新書)

価格: ¥903
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論社
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タイトルをドイツ中世史にして、18世紀以降は別作者にしたほうが良い。 ★★☆☆☆
本書では、ドイツ中世の宗教と世俗の関係、領主と領民の関係、共同体と個人の関係について深い洞察をしている。特に、アジールという古代ギリシャから見られる庇護権をキーワードとして、現代のドイツが抱える東ドイツ出身者、あるいは外国人労働者問題を考察している観点はユニークだ。ドイツ中世のアジールの精神、あるいは近代国家の概念をヨーロッパで最も遅くまで取り入れられなかったドイツのラントの存在を詳細に知ることができる。

しかし、時代が近代以降、ビスマルク辺りからは記述がおざなりで単に歴史的事実を記述するだけ。政治家や個人の精神面に踏み込むこともない。数々の戦争の時系列に並べているだけで、少し踏み込んで記載すると事実誤認してしまう。

近代国家に全く関心が無いのか、世界市民が好きなのか、国家を超越したユートピアをEUに託しているようだ。さらにその精神を日本も見習うべきと言い出しかねない雰囲気まで漂わせて終了している。

確かにドイツの歴史は複雑だ。プロイセン中心に統一されるまで300のラントに分裂しており、統一後は20世紀の2つの世界大戦を引き起こしている。確かにこれらは、複雑な過去がドイツ精神に与えた影響によるものかもしれない。しかし、近代から現代までの歴史の流れをこの著者に求めるのは明らかに間違っており、力不足である。著者の責任ではない。読者を馬鹿にした出版社の責任である。
コンパクトにまとめてはみたものの… ★★★☆☆
 ドイツといえば、歴史の上でも今日の状況の上でも、一貫して大きな存在感を発揮し続ける欧州の大黒柱的な存在です。しかしながら、その歴史的な歩みは分裂と流動、そして周辺との恒常的に不安定な関係に彩られており、その大まかな流れや「ドイツ的」なるものの具体的な内容を示そうと思うと、やはり一筋縄ではいかないようです。
 本書は、古代から現代に至るドイツ民族の歩みを鳥瞰図的にまとめたものです。単なる政治史のみでなく、社会的・文化的・宗教的な側面についても適宜触れているほか、各時代の特徴等に対する考察も随所で試みられており、さすが著名な西洋中世史家の手になるものと感心しました。
 他方、コンパクトなボリュームに多くの要素を盛り込もうとした結果、一般読者向けの入門書というよりも、本格的な概説書の内容を蒸留したような塩梅となってしまった観を否めません。副題に示された「ドイツ的とは何か」という問題意識との兼ね合いもあるのかも知れませんが、宗教や文化の紹介についても、この種の本で時代毎にマイナーな人名等を登場させることに如何ほどの意味があるのでしょうか。
 また、著者は、ドイツ史を貫く一筋の「赤い糸」として古代・中世以来の「アジール」(庇護権)なる慣習を取り扱おうとしたようですが、これに関する具体的な記述はルネサンス期までに止まり、その後の展開については、いきなり現代ドイツ憲法における亡命・難民の地位の話にまで飛んでおり、些かの戸惑いの心持を禁じ得ません。
 総じて思うに、水準的には結構なものがあるように見受けますが、「物語」と銘打つ本シリーズの趣旨との関係では、相当に議論が分かれるのではないでしょうか。
「ドイツ史≒ヨーロッパ史」 ★★★★☆
確かにこの本に「物語性」は欠けていますね。簡単に言えば、この本はただの「ドイツ史」の本です。「他の中公新書の「物語○○の歴史」の趣旨から逸脱しているのでは、と言われてしまえば、その批判は免れないと思います。

ドイツ史をまとめにくいは、ある意味「ドイツ史≒ヨーロッパ史」的な性格があるからだと思います。神聖ローマ帝国は、確かにドイツ人の国家ですが、また「皇帝」は、カトリック教皇が権威を保証する「全ヨーロッパの皇帝」だった訳です。だから宗教改革、30年戦争などのカトリック、プロテスタントの全ヨーロッパ的な抗争もドイツを中心に起ります。近代になってもドイツはヨーロッパにおいて主人公(あるいは厄介者)としての役割を果たしました。ビスマルク体制、第一次世界対戦、ナチス・ドイツ、そしてドイツ統一です。全部全ヨーロッパを巻き込む歴史的な大現象です。「全ヨーロッパの皇帝」を頂いた、多数の領邦からなる連合国家としての道を歩み、「ヨーロッパの中心」としての性格を常に失わないドイツのあり方から来ます。

ドイツで大事件が起こると、必ず全ヨーロッパに波及します。

現在もヨーロッパ統合を一番積極的に推進しているのは、他ならぬドイツです。またロシア語以外では、ヨーロッパで最大の話者人口を有しているのはドイツ語です。英語もヨーロッパでは、イギリス以外は基本的に通じませんし、かってヨーロッパの共通語だったフランス語は貴族階級の没落とともに存在感を失いました。一方ドイツ語はドイツ、オーストリア等の国語ですし、東欧でも結構話者がいるし、バルト諸国でもかなり影響力があります。東へEUが拡大するにつれて、これらの地域でのドイツ語は、ますます存在感を増している状態です。とにかく「ドイツ史」はひとつの民族史としてくくれません。

interesting book, but..... ★★★★☆
一冊の新書に「ドイツ史」を盛り込むのは大変な作業だったかと拝察いたします。
とはいえ、神聖ローマ帝国の誕生からはじめて、次第にオーストリア(エステルライヒ)、ベーメン以外の現ドイツ地域に話題が限定していくので、後半はプロイセン中心の歴史になっていて先ずは上手くまとまった体裁になっています。

 しかしながら、『物語ドイツの歴史』というタイトルの割には、歴史物語的な面白さに欠ける本だと言わざるを得ません。やはり、ドイツ圏ないしドイツ民族のように文化史的にも民族的にも重要かつ変遷に富む対象を扱うのは、「物語アイスランドの歴史」や「物語カタルーニャの歴史」の様に容易には参りません。

ここは矢張り「物語バイエルンの歴史」、「物語プロイセンの歴史」、「物語オーストリアの歴史」、等々、地域別に分冊で執筆して頂きたかったと存知ます。