訴求力があり節度のある表現が諏訪内晶子の真骨頂でしょう
★★★★☆
ヴァイオリンの美しさに浸ろうと思い、このCDを聴きました。
長い間モントリオール交響楽団を育ててきたシャルル・デュトワの指揮、古き良きヨーロッパの香りを残した英国のフィルハーモニア管弦楽団の演奏、そして諏訪内晶子が居を構えているフランスの作曲家の作品を中心に収録するという好企画です。比較的有名な作品から、非常に珍しい曲まで変化に富んだプログラム・ビルディングが魅力です。
サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」や、ショーソンの「詩曲」を聴いていますと、端正でけれん味のない格調高い演奏なのはすぐに理解できました。正統派といいますか、非の付けどころのないカチッとした音楽です。音の伸びやかさと透明性は比類なく、表現力も多彩ですし、作曲家の意図も的確に再現しています。
クライスラーの小品「才たけた貴婦人」は一服の清涼剤のような感じを受けました。愛らしい曲です。軽やかな演奏が曲の可憐さを引き出していました。
ベルリオーズの「夢とカプリッチョ」も良いですね。幻想交響曲のイメージが強いですが、このようなメロディアスで、チャーミングで、華麗なヴァイオリン曲があったのですね。清純な香りもしますし、情熱的な部分も感じました。
秀逸なのはラヴェルの「ツィガーヌ」です。内面の充実が感じられるようなメリハリの効いた訴求力のある演奏です。前半4分間のヴァイオリン独奏の部分は、演奏の難しい部類に入ると思いますが、技術的な点は申し分無く、表現力においても聴く者の心を捉えて離しません。異国情緒溢れる曲の特徴をよく捉えた演奏でした。