視座の提示
★★★☆☆
確かに著者は独自の視点と切り口を持っているし、ここに示されている事例や示唆は貴重なものだと思う。けれども、赤坂憲雄が解説で指摘するとおり、それは決して方法論的に成熟させられてはいかない。というか結論めいたものが出そうになると、その前にすいっと話題を変えて、はぐらかしてしまうのだ。
安易に結論を出したり普遍化したりするべきではない、というのが著者の「結論」なのだろうか。貴重な視座を提示するだけして、「どうぞ」と自分はどいてしまう。本の内容より、むしろ著者の姿勢のほうが興味深い。