大栗裕作品の決定的演奏。後世に残る資料。
★★★★★
大栗裕の吹奏楽曲をまとめたアルバムです。指揮は朝比奈隆と木村吉宏、演奏は
大阪市音楽団が担当しています。音楽も演奏も指揮もすべてにおいて大阪の活力
とパワーを凝縮したような見事なものです。また、愛情にあふれた音楽づくりが
なされており、この演奏を聴いてしまったら他の演奏が物足りなくなってしまう
かもしれません。音質も非常にすばらしい。
特に朝比奈隆がベルリンフィルに客演する際の「持ち歌」ならぬ「手持ち曲」
として作曲され、その後吹奏楽用に編曲された「大阪俗謡による幻想曲」は演奏
がすばらしいだけでなく、資料的価値も非常に高い。これ1曲だけでも十分推薦
に値します。
また、朝比奈隆に師事した木村吉宏は大阪市音楽団長兼指揮者として活躍した人
であり、2010年現在でも全国各地で吹奏楽振興のために大活躍しています。
大栗裕の最後の作品となった「仮面幻想」は4/4拍子と7/8拍子がめまぐるしく
組み合わされた複雑な構成ですが、いにしえの舞楽(新鳥蘇というらしい)を
自由に想像して作曲されており、楽しげな中に物憂さと呪術めいたものを感じる
ことのできる曲です。最近はあまり演奏されることがないようですが、ぜひ
リバイバルしてもらいたい曲の一つです。