この曲の名盤中の名盤。この演奏こそが、この曲のベスト盤ではないか
★★★★★
舞曲集といえば、ドヴォルザークのこの「スラヴ舞曲集」と、ブラームスの「ハンガリー舞曲集」にとどめをさすが、「ハンガリー舞曲集」が、後半の第3集以降が退屈で、抜粋盤があれば十分と感じるのに対し、この「スラヴ舞曲集」は、後半の第2集も一定の水準を維持しており、全曲盤としては、明らかにこの「スラヴ舞曲集」の方が聴き応えがある。
また、「ハンガリー舞曲集」の方が、めぼしい全曲盤がアバド指揮ウィーン・フィル盤くらいしかなく、ほぼこれで決まりという感じなのに対し、この「スラヴ舞曲集」の方は、いわゆるお国物指揮者を中心に、結構、全曲盤の数も多く、選択肢の幅が広いのも特徴だ。
セルとドヴォルザークの相性の良さは、私も交響曲第7番と第8番で確認済なのだが、昔から名盤中の名盤として知られているこの舞曲集でも、この曲のベスト盤といわれているクーベリック指揮バイエルン放送響盤よりも、明らかに出来が良いと感じた。
セルは、ゆったりとしたテンポを基調に置いているだけに、クーベリックよりも緩急の描き分けが一層大きくなっており、音の強弱の幅、表情付けも大きい。こうした特徴が一つの曲の中で絶妙にブレンドされており、優美さと、スラヴ舞曲特有の激しく軽快に躍動するリズム感を兼ね備えた、スケールの大きい素晴らしい名演となっているのだ。
ちなみに、私は、クーベリック盤は、2007年2月発売の最新盤ではなく、手持ちの1992年11月発売の旧盤で聴き比べを行っているのだが、クーベリックは、セルよりも5分近く速いテンポを取って、推進力に富んだ軽快な演奏はしているものの、意外に表情がさらっとしているというか淡白で、セルと比べるとスケールも小さいのだ。少なくともこの旧盤で聴く限り、私には、この演奏がこの曲のベスト盤であるとは、にわかには信じ難い。
クールでスマート、緊密な「スラブ舞曲」
★★★★☆
ドヴォルザークの「スラブ舞曲」管弦楽版。作品46からの8曲と作品72からの8曲をジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団が演奏して収録したディスクである。録音は1963年から65年にかけて5回のセッションで演奏されたもの。機能的なアンサンブルで定評のあるセルとクリーブランド管弦楽団のコンビだが、ここではスラブ的なメロディを時に粘っこく、リズミカルな曲では熱っぽく演奏している。録音のせいか、管楽器にやや色彩感が不足しているが、そのぶん瑞々しい弦楽器の神技に近いテクニックが埋めている。作品46の第3番の終結近くの追い込みや、有名な作品72の第2番(ホ短調)の粘りと独特なルバート、第7番のアンサンブルなど実に素晴らしい。