宝島ースティーブンソンと南洋
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「39階段」などで知られる英国作家ジョン・ブーシャンは自伝の中で若い頃いかに同郷の人気作家スティーブンソンの南洋冒険物語に胸を躍らせたか、どれだけ彼が若者たちの偶像であったかを述べたあと、やがて彼の作品に線の細い虚勢や作為を感じはじめるようになり、離れていったと言う。おりしも大英帝国の最盛期であり、彼の南洋物は時代の流れにのった形で大人気を博した。スティーブンソンは南洋に死んだが宝探しに行ったのではない。結核の療養に行ったのだ。これは病弱だった作者が憧れて果たせなかった冒険の物語である。