骨太
★★★★★
マイスキーのチェロは、何と骨太で、表情が豊かなんでしょう。
トーマスの指揮は、少し軽妙ですが曖昧さが無く、やはり骨太という言葉で形容するのが適当です。
ショスタコービッチのチェロ協奏曲第1番では、第1楽章の長大で荒々しい、独奏に近いチェロが聴き所です。
これをマイスキーは、やや速めのテンポで、迫真のチェロを聴かせてくれ、トーマス指揮ロンドンフィルのサポートも、正確無比です。
この部分には、深く聴き惚れてしまいます。
第2楽章以降は、マイスキーのチェロは、表情豊かに歌います。
協奏曲第2番は、第1楽章は囁く様に、ゆったりと始まり、第2楽章、第3楽章と順にクレッシェンドしてゆきます。
つまり、曲全体が、全楽章を通してポコ・ア・ポコなのですが、オーケストラもチェロも、哲学的ですらあります。
第2番は当初、チェロもトーマスの指揮も、深く苦悩している様でもあるのですが、楽章が進むにつれて段々と表情が変化し、
瞑想を通り抜け、苦悩を乗り越えた様な包容感を放散する様になります。
やや地味な協奏曲第2番ですが、チェロとオーケストラの一体感が素晴らしく、十二分の聴き応えがあります。
資料によると、第1番の初演は1959年、第2番のそれは1966年となっています。