渾身のライフワークが遂にCD化
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毎年やってくる8月15日。そう、終戦記念日です。
この日の午前になると、TBSラジオの「大沢悠里のゆうゆうワイド」というワイド番組内で、秋山ちえ子先生の朗読を聴くことができます。
土家由岐雄氏原作の、事実を元にした童話「かわいそうな ぞう」の朗読です。
このCDは、そのラジオで聴ける朗読のCD版となります。
この童話は、上記のラジオ朗読だけでなく、一時期には小学二年生の国語教科書に採用されていたことがあるので、ご存じの方も多いかと思います。
このCDの登場で、毎年8月15日を迎えなくとも、秋山ちえ子先生の朗読が聴けるというのは実に有意義なことです。しかも、ラジオ朗読はAM放送でのものなので、クリアなステレオ録音によるこのCDでの朗読はとても聴きやすく、秋山先生の判りやすく端正なリズムによる発音・発声の良さがよく判る仕様になっていると思いますネ。
きっと、初めて聴く方の多くは、これが91歳の女性の朗読だと言っても、ちょっと信じられないのでは?
また、3番目に収録されているロングヴァージョンは、ラジオ放送用でなく土家氏の童話本本篇の朗読で、4番目には「ハイスクールはダンステリア」「タイム・アフター・タイム」「トゥルー・カラーズ」のヒットで知られるシンディ・ローパーによる英語版の朗読が収録されています。どちらもラジオでは聴けない貴重なテイクです。
CD化された本作には松谷卓氏によるBGMが流れますが、朗読を妨げず、朗読を誇張せず、ホントに絶妙の旋律なので、ラジオの朗読を聴き慣れた方も十分本作を堪能できると思います。
ライナーノーツには、ラジオヴァージョン本編全文が記載されていて、文字として童話を読むこともできるようになっており、情報公開に積極的な秋山先生らしく、詳細な情報ももれなくライナーノーツに書き込まれていて、原作を大切にする想いが伝わってきます。
43年前から毎年8月15日に、この悲しい物語を読み続ける秋山先生の、戦火に巻き込まれ非情な行為をせざるを得なかった者、そんな人間のために命を落とさなければならなかった動物たちへの鎮魂と、再び「かわいそうな ぞう」がこの世に生み出されないよう願う想いが「静かなる迫力」となってスピーカーから伝わってきます。それ故に、この渾身のライフワークは、CD化されて然るべきものだとも思います。
秋山先生がライナーノーツで「このCDは小学生、中学生にきいていただきたい」とおっしゃています。次の時代を担う義務教育世代に、この平和な時代の今、是非とも聴かせてあげたいですネ。