戦略性の向上に貢献
★★★★☆
本書の目玉は「VEコンバット」である。
これに関する評価はさまざまだが、個人的には「射撃武器の有用性を向上させたシステム」として高く評価する。
これまでのソードワールドは、距離に関するデータ管理が非常に曖昧で、ほぼGM裁量となっていた。
実際のコンベンションのセッションなどでも、戦闘開始=いきなり至近距離という例も多かったと思う。
現実世界では「遠くから一方的に強力な攻撃を行える」射撃武器が確実に有利なのだが、
GM的には使われると非常にやっかいなため(大半のモンスターは、遠方からの射撃に対抗できない)、
大半は「近接戦闘中の敵に撃つと味方に当たるぞ(射撃禁止!)」といったGMの一方的な処理が正当とされ、プレイヤー側に反論の余地はなかった。
範囲魔法の効果範囲に関してもGMの気分任せ。(公平さなど全くなし)
さらに白兵戦闘の華やかさを損なうものとして、射撃武器の地位はどん底といった状況であった。
しかし、このシステムによって明確に距離が指定され、GMの強権で射撃の有利さを押さえつけることが不可能になったため、
弓兵(レンジャー技能)の有用性が認められ、プレイヤー側のキャラクターメイクの幅が広がり、同時に戦術の幅も広がった。
ルールブックには「緻密で高度な戦闘は考慮されていません」とあるが、ルールを複雑化するだけが高度な戦闘を表現する方法ではない。
これまでユーザ間では面倒臭がられていた「宣言システム」をすっぱり切り落とし、単純明快でよりリアルな戦闘に仕上がった点を評価したい。