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民俗宗教を学ぶ人のために

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 世界思想社
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おもしろいけど重いかも。 ★★★★☆
豪華執筆陣による様々な民俗宗教論をまとめた本。タイトルからして初心者むけかと思いきや、むしろこの分野に関連してくる現象に関してある程度の知見を備えている人に、学問的な視野を広げるための新たな観点を提供する、というような内容の文章が多いように思われた。一応、予備知識なしでも読めるのだが、そもそも「宗教」に対する関心の薄い日本の一般読者がいきなり読み始めるには、盛り込まれている情報量が多すぎてきついかもしれない。
まず「民俗宗教」という概念がなかなかやっかいなのである。いわゆる「宗教」すなわちキリスト教やイスラームや各種の新宗教、それから仏教や儒教や神道(だんだん「宗教」というのが微妙になってくる)など教義や組織が割と明確な現象群とはちょっと異なる、しかし「霊」や「他界(異界・あの世)」や「カミ・ホトケ」の存在や力をうすぼんやりとでも感じさせてくれる、生活の中の身近な信仰や実践の組み合わせ。それは「宗教」というにはあいまいすぎて、けれど無意識の中で身体の中でしっかりと生きている「宗教」であるように思えるので、「民俗」という言葉を加えて具体例をたくさん参照しながらうまく把握しようとするのだけれど、しかし相変わらず難しい言語ではつかまえにくい言語の外の対象としてそれはある。
また、その対象は時代・地域的にかなり広い範囲に及ぶから、その研究をちゃんと読むのには比較的高度な知的修練が必要とされてしまう。我々のあの世の発生が考古学的な資料によってあぶりだされたり、民俗宗教の根源を求めて古代の神話や伝説が読み解かれたり、中世の神仏の世界の豊穣さやそれを構築した宗教者や権力団体の運動が再検討されたり、現代の社会=宗教変動とのからみで民俗宗教観の変容が論じられたりする。また、論者によっては、そうした時代ごとの宗教性の相違を超えた日本文化の根底に流れる信仰の論理の解剖をこころみている。それぞれ興味深い議論であるが、けれど、これらの全体を読み込んで理解を深めていくのはなかなか大変である。
初学者でももっとすっぱっと入っていける民俗宗教論の本は作れないものか、と思ってしまった。