読むと短歌を詠んでみたくなります
★★★★★
正直に言いましょう。ボクはあとがきを読むまで、タイトルに"い"を補完して読んでいました。お前だけじゃない。つまり著者が読者に同情するような意味を持たせていたのだけれど、実際には著者が自嘲する言葉だったのです。先入観というのは怖いものです。
この作品は短歌とページ下に描かれたパラパラ漫画の様な絵、そして短歌について書かれたエッセイで構成されています。はじめに本を開くと、やたらと行間が空いていてスカスカだなという印象を持ちます。しかし、読み始めるとその印象は覆されるでしょう。
普通の人生の中でも、心に残る出来事というのはたくさんあると思います。どんなに言葉を連ねても表しきれないような想いを、わずか31文字、400字詰め原稿用紙ならわずか一行半に凝縮させてしまうのです。
江戸時代、夫から妻への離縁状は三行半と呼ばれました。ただ無常に別れを告げるだけでもそれだけの字数を必要とするのに、遥かに複雑な想いを一行半で表現しきってしまう短歌というものの、表現力の豊かさに心を打たれました。