マーマレードの朝
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飲んで、移動して、また飲んで、移動して、
やがてマーマレードの朝。
クラブのホステスと、たまたま店に来た一介のサラリーマン。
決定すること、依頼することが女の役目であり、
引き受けること、運転することが男の役目だ。
女はアルコールを、飲む、飲む、飲む。
男は部屋に連れて行くこと、待つことくらいしかすることがない。
時間が経過し、女の懸案が済んで、正月五日。
夜ではなく、アルコールはなく、
ベーコンエッグとマーマレードを塗ったトーストと
ささやかな出発の朝が来る。
【著者】
片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。76年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。