オートバイに乗る人
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人事は荒れても、秋はきょう、この日から始まる
ひどい仕打ちであることは間違いないにしても、それをこんなふうにやってのけることには、やはり小説としての爽快感があると言うべきだろうか。
どちらからともなく仕掛け、あいまいに合意し、到達しようとしたところで男はさっと身を翻す。
オートバイに乗る男は身軽だ。
相手の中にある自信、傲慢を打ち砕くこと。
そのあとに乗るオートバイ、そこで感じる秋の最初の一日の快適さ。
本当にひどい男であっても、その快適さは真実だ。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。