調査結果ではなく著者の主張
★★☆☆☆
調査結果を分析したような体裁をとっているが、主な中身は調査結果ではなく著者の主張である。主張の中身には、整理されていなかったり温すぎたり安易だったりするものの、共感できるものや重要な指摘もある。きちんとした調査報告や定番の教え方マニュアルと比べると薄くて穴だらけではあるけれど。
一章で記されている比較的新しい意識調査や勉強時間調査は5分ほどかけて読む価値は十分にある(調査規模も内容も大したことないが)。ポイントは冗談みたいに勉強時間が少ないということ(大学生なのに)。勉強の質には言及していない。この他には、やる気がなく恐ろしく教えるのが下手な大学教員の批判や、そいつらに対して学生がどのような反応を示しうるかの考察もなかなか良いと思う。
その他の部分は温めのエッセイ以外の何ものでもない。調査結果の紹介部分では「相関」と呼んでいたものがいつのまにか因果関係として扱われているとか、「こういうアンケート結果が出た」がきちんとした論理を踏まずに「こういうことがわかった」に入れ替わっているとか、「○○という意見が多い」が直後の文脈では「○○をすれば良くなるだろう」になっているとか、大学で教えている学問の水準や学生の学力水準を完全に無視して教え方に関する提言がされているとか、読書量無視とか。そんなレベルの本です。
学生の立場で読ませて頂きました!
★★★★★
大学のゼミで「役立つ授業とは何か?」を追求しています。そこで担当教員がこの本を紹介して下さったので、じっくり読ませて頂きました。
課題を出されると、真面目に取り組む学生が多い―これは私の大学(地方)でも同じような傾向にあります。ただ、周りの学生を見渡してみると…履修登録の段階で「厄介な授業は履修しない」という流れが出来上がっているように思います。厄介な授業とは、人前でのプレゼンがあったり、小レポートが毎回課される授業のことです。
与えられればやる。自分からあえて厳しい状況に身を置かない。根本の問題は、全てが受身になっている学生にあるのではないかと思います。ここをどう改善し、自発的にさせるかが1番の論点かも知れません。
この本は、学生を優しく導いてくれており、学生の希望の星となり得ると思います。だらだらと毎日を過ごしていた学生は、ある事をきっかけに生き生きとした生活を手にする―充実を手に入れるヒントが沢山隠されていて、刺激を沢山頂きました。
素直に読めばいい本だが
★★★☆☆
結論―内容的には、大学生、大学、親などが何をすればいいのかが書かれているいい本だとは思うが、結構不満点の多い本であるから、全体的にイマイチだと思うので、星3つ。
この本の問題点
1、調査。「2104人に調査した」(p11)とのことだが、有効回答はどれくらいかが明らかでない。また、「自信力」のない人は(消極的だから)回答しないと予想され、著者の主張に都合のいい回答しか得られていない恐れがあるので、きちんとした調査なのか疑問を持った。
2、提言。これを実際にやるのは大変だろうというものばかり。もう少し、これなら出来るという提言はないものだろうか。
3、私が思うに、大事なのは、「いかなるときにも自信を失わないこと」だと思うが(本文で言えば、フリーターでも、無業者でも。著者はこれらを肯定的には書いていない)、そのための提言がない。結局、著者の価値観に従えと押し付けているのに過ぎないのではないか。
自己啓発書
★★★☆☆
課題や予習義務が課されれば学生は勉強する、失敗を恐れないクラスの雰囲気づくりが発言を生む、トラウマを乗り越えるためにはトラウマと向き合い自分を見つめる、学生も教員や教務課に対して意見をなげかけるようにすれば授業は改善される・・・などの提言に対して私は疑問を持った。
本書が肯定的に受け止められるのは、インタビューを基にしているため共感できる部分が多いからだと推察するが、根本的な解決には何もなっていないような気がしたのである。
確かに上記のようなことを実践に移すことが出来れば、あるいは状況が変わるかもしれない。しかし、これらの提言はそれを実行した時に生じる影の部分、つまりマイナス面にあまりにも無頓着ではないだろうか。
大学生の現状が好ましくないとしても、それは様々な要因が絡み合って成立している文化なのであるから、表面的な解決策ではその弊害が大きい。
考えなければならないのは、なぜ学生が作者の言う「自信力」が失われていったかである。大学全共闘時代からも想像できるように、数十年前までは学生の学びへの内発的動機付けは十分に為されていた。しかしなぜ現代においては、教員にもクラスにも発言できないような環境を作り上げてしまったのか、これが重要である。
本書を自己啓発を重点においた書籍であるならば、その目的は果たされていると考えても良いが、新書や学術的な価値を考慮するのであれば、その内容は薄いと考えざるを得ない。
学生の必読書!
★★★★★
「『自分の生活、自分の考え方、自分の価値観でいいのだ』という堂々たる自身を築こう」という筆者のメッセージに力づけられました。
本の上段に本文、下段に学生に対するインタビューが掲載されるというユニークなスタイルの本。
特に「自分はこうして遊んでばかりの生活から立ち直った」とか、「私はこうやって就活を乗り切った」という大学生活の体験談や、「本当はもっと勉強したい」、「先生は学生を遊ばせすぎ」といった大学生の本音を集めたインタビュー、そして問題解決のための具体的な提言は必読です。
大学生活のテキストとして、大学生だけでなく、受験生に贈る本としても最適ではないでしょうか。