町内会奮戦記
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町内会は地縁団体であって、回覧板配布など地方自治体の連絡事項を周知させる行政の末端組織でもあり、市会議員や首長選挙となれば集票マシンとして働く。戦前の大政翼賛会の流れをくみ、また戦時中の隣組組織としての負のイメージもあって快く思わぬ人もいる。しかし、地域社会のあり方からして一般住宅であれば、町内会に入っていないと何かにつけて不都合が生じる。ところが、管理組合で構成するマンションの場合は町内会の存在感は薄い。町内会未加入のマンションもあり、加入していても月々の会費を支払うだけのことで、気が向けば町内会主催の盆踊りや運動会に参加するといった程度。
大手不動産会社が分譲した城西コンフォートマンションは入居開始から三年が経つが町内会がなく、管理組合から突然、町内会設立準備委員呼びかけのペラ紙が郵便受入っていて、管理員が管理組合の前理事長を町会長にするための伏線であろうと睨み、横柄な態度の前理事長の町会長構想を阻止するため、主人公自らが準備委員となって町会ニュースを出すなど組織作りに奮闘するありさまを描いた作品です。
〈作品内容〉
入居開始から三年が経って、突如、一枚のベラ紙で町内会設立の必要性を説き、その準備委員を募る管理組合の思惑、管理組合というより管理委託している企業から派遣されている管理員が前理事長の尾前さんを町会長にするために画策しているものと受けとめ、その思惑に冷や水を浴びせようと、理事長時代の尾前さんに反感を持つ三階の常滑夫人と妻が相談し、常滑さんとぼくに手をあげさせて準備委員にならせる。思ったとおり準備委員は常滑さんとぼの二人だけ。
管理員は役所の事務系職員を勤め上げ、定年退職後管理会社に入ったもので、事務系職員としての抜け目のない粘着性があり、また、理事長時代に町内会を作らず、理事長の任期を終えたのちに町内会づくりに動く尾前さんへの不快感もあって町内会づくりに邁進する。町会ニュースを全戸に配布して町会の必要性を説き、町会に対する質疑応答を載せ、そのうえで町会参加の賛否を問い、各階の班長選出の手続き、班長会議、町会費徴収方法、さらに連合町会との共同説明会を開き、町会設立が目の前に見えてきた段階で、作成した町内会規約通り役員の立候補を呼びかける。案の定、前理事長の尾前さんが臆面もなく手をあげ町会長を求める。常滑夫人のすすめでぼくも立候補することにし、班長会議における班長の挙手で決することに。