「浮ついた設計」を無くせ!!
★★★★☆
そのタイトル通り、ITシステムの上流工程(設計)について記した本。「あるべき論」が多いのだけれど、上流に携わる人間が踏まえるべき心得や技法などが容易に記述されており、中々よい本だと思う。
個人的に、上流工程に関わる上で重要だと思われたのは下記の点である:
・ ITシステムを含む業務全体を視野に入れる必要がある。。
・関わるべき対象はシステムだけではない。
ITシステムというのは、所詮顧客業務の中で使用する手段/ツールなのであって、業務に付加価値を付与できなければ意味が無い。それゆえに、システムの設計者は業務全体を俯瞰する必要があるし、システム構築の費用対効果(ROI)も常に考えなければいけない。また、良いシステムを構築する上では、業務の定型化や改善をしておくことが前提となるので、BPR的なフェーズにもかかわらざるを得なくなる。それゆえ、顧客の情シスだけでなく、関連部署のキーマンとの折衝も必要になってくる。一方で、夢物語のような設計をしても無意味であるから、実装工程をはっきりと意識し、運用フェースの細部まで想像できるようでなければいけない。
今、ワタシはとあるwebシステムを運用している。比較的簡略なポータルサイトなので、システム的には複雑ではないけれども、ユーザの観点からするとどうにも使いづらい。理由は様々だが、概して問題点は以下のようにまとめられるように思う:
1. 業務のヒアリングが不十分。ゆえに、「ありえない」実装が随所に見られる。
2. そもそも各機能の要不要が不明。
同システムは設計をコンサルティング会社、実装を別の開発会社が行っているので、ここら辺の問題はコンサル会社にあると言える。ただ、ユーザの観点からすると、実装を担当した会社の咎のように思えてしまう。本来、設計を担当する人間が十分なヒアリングを基に、要件の実現可否を明確にすべきだし、運用フェーズまで勘案した実装方法を提示すべきなのであろう。
哀しいかな、今の日本のIT業界では、
・この程度のコンサルティングが事実上良しとされているし、
↓
・下流工程担当業者に低質な設計のシワ寄せがなされる
↓
・下流工程を誰も担当したがらない
↓
・実装経験の無い、なんちゃってコンサルが増える…
という負のスパイラルが増幅する構造が固定化してしまっているように思う。
開発工程のアウトソースやクラウドコンピューティングなどが導入され、大勢として実装工程はROIの低い、関わるべきでない部分とみなされるような雰囲気もある。ただ、逆にそういうご時世だからこそ、実装工程をはっきり意識した設計と言うのが必要になるのではないだろうか。忌避すべきは、「浮ついた設計」である。所詮コンピュータの固まりであるITシステムは、曖昧な部分を補えるほど融通は利かない。森を見るのも大事だが、神は細部に宿る(ミース)のである。
建築士のあたまと、大工の手足・・・
★★★★☆
SEとは、コンピュータや情報ツールを利用して、顧客のビジネスを好転させるためのきっかけをつくる人だと思いました。
その基本は顧客との信頼関係・コミュニケーションであり、コンピュータおたくとは一線を画すものがあります。
虫の眼だけでなく、鳥の眼を持つことが大事だと思いました。
本当の上流工程
★★★★☆
どんなことがしたいかと言われれば上流工程がに携わりたいと答えている。具体的にどんなこと?と聞かれた場合に答えが自分の中でしっかりと定義できていないことに気づき、上流工程のスコープを学びたくて購入、通読
読んでみるると、上流工程のスコープの中でありえる作業を具体的に記載してくれている。業務内容のモデリング、概念データのモデリングなどはイメージ通りだったが、顧客との交渉、コスト、プロジェクトにおけるベネフィットなど、自分にとっては意識が甘かった部分も多々ある。特に上流工程の目的が、設計実装ステップの前段階という技術的な仕事だけではなく、顧客と共に新しいビジネスモデルを作るための活動だというのは非常に新鮮でした。また、ベストかどうかは主観が入るところだと思うが各フェーズでの具体的な生成物についても定義してくれているのは面白い。
通読することで上流工程の役割、守備範囲、生成物を改めて見つめなおすいい機会になったと思う
まさに「やり抜く」ための本
★★★★★
この本の内容を一言で言ってしまうと、上流工程に携わるにあたり「プロ」としての意識をどのように持つべきかというものです。その他に投資価値の考え方や、デルファイ法、FP法などの見積もり技法の簡単な説明もあるので、上流工程で必要となる知識はどういったものかを知りたい方にもお勧めかと思います。
既存の書物の書き写しではなく、筆者の経験を基に筆者の考えを自分の言葉で書かれているので、分かり易く、またとても読み易かったです。内閣府CIO補佐官も経験されていることだけあって、説得力もあります。
コンサルティングという立場におられる方や、コンサルティングを目指している方はもちろん、SEという立場の方にも一度は読んでいただきたいと感じました。
不満を挙げるとすると、顧客との間の用語の定義の重要性が記されていなかったことでしょうか。しかし、それでも評価は星5つです。
非常に役に立つ話がたくさん詰まっています
★★★★☆
サブタイトルに"必勝ノウハウを大公開”とあるとおり、上流工程のノウハウが多く記載されています。「はじめて」でなくても全てのSEに参考になるでしょう。例えば、「新システムに対する改善・要望アンケートを採るな。(やらないよりましではなく、)やるな!!」と、理由を挙げて述べられていたり、なるほど、とか、そうそう、と思うエピソードがいくつもあります。また、「システム」の定義から語られていたり、ビジネス・会社とコンピュータの歴史と感情を持った人間の関連にも触れられていて、”コンピュータシステム”だけでなく、周辺のこういった話が好きな方にはおすすめです。”計画Planning"”要件定義Effective Requirements Definition”なども、もう少し同じように、定義からはいっていただくともっと(私としては)良かったですが、実務で失敗しないため、アイデアがほしいときに、読んでおいて(もしくは置いておいて)有益な書籍だと思います。