『歴史から読み解く英語の謎』となっているが
★★★☆☆
問題の立て方が,目次を見れば分かるように,「なぜ現代の英語ではこうなっているか」という立て方なので,問題になっている表現に使われる単語ついて語源に遡り,どうしてそうなっているかという解説を語源や英語の発音変化からのアプローチで解説している。複数の問題について,同一の発音変化が絡んでいる場合があり,その辺りの説明表現が全く同じなので冗長な感じがする。ドイツ語やフランス語を勉強していると,語源や,特に古期英語(本書では「1000年頃前の英語」などと現代から遡る時代表現で分かりづらい;なぜ1000年頃の英語などと時代を特定する表現にしないのか)の動詞の活用などについて理解を得やすい(例:昔のbe動詞にはドイツ語でいうwerdenがあったなど)が,他言語の知識のない読者には古期英語のよい入門書の一つになるかもしれない。この本を読んだからといって,現代英語がうまくなる訳では全くない。不規則的なものに対する理由を求める前に,練習問題等でそれが使えるようになった方が現代英語の運用にはよい。また,この本は日本語の表現が稚拙なところがあったり,決定的な表記ミスがある(例:最初についている年表の「近代英語期」となるべきところが「中期英語期」となっている)ので,注意されたい。
過去は現在を語る
★★★★★
英語は綴り字一つとってみても,学習者にはとても不規則で謎が多い言語です。しかし,現在の英語が今の生活にマッチしてないかと言えば,非と答えて良いでしょう。現在の英語は現在の社会に最適な状態になるように変化し続けていると言って良いと思います。どの時代の英語もその時代に最適な状態になろうとする力が働き変容してきたとも言えます。ということは,現在の英語に至るまでの英語の歴史を振り返っていけば,その過去の中に,現在不規則とも思えるものの規則性や合理性が浮かび上がってくる「時」を見ることができ,謎が謎でなくなることになるのです。すでに英語をある程度学んできた人には,本書はとても刺激的で,納得させられるものです。多少説明が分かりにくいところもありますが,本書を読めば,英語をより深く理解し,さらに興味をもって学習していくための活力を与えられます。