シランクス~フルート名曲集
価格: ¥1,050
2000年にこの世を去るまで、ランパルはフルートの帝王だった。雲ひとつない青空に輝く太陽のように。あるいはいささかも欠けるところのない満月のように。彼の演奏がそんな印象を与えたのは、リッチな音色、卓越した技巧、そしてまさに王者のようなスケールの大きさゆえだったろう。豊麗で輝かしく、朗々として円満。いかにも栄養のありそうなというか、俗なたとえをするなら、血も滴るステーキのようでもあった。
バロックから20世紀の作品までを集めたこのベスト盤は、フルートとチェンバロ、ピアノとフルート、フルートとハープ、無伴奏フルートという3つの組み合わせを並べることにより、それぞれ異なった音色が楽しめる工夫が凝らしてある。
バッハ、ヘンデル、モーツァルトはロベール・ヴェイロン=ラクロワがチェンバロで伴奏。ランパルの演奏は淀みなく滑らかだ。モーツァルトと同じ時代に活躍したクルムフォルツのソナタと、オリジナルはヴァイオリンとピアノのために書かれたフォーレの「子守唄」は、ともにリリー・ラスキーヌのハープと。クルムフォルツはハープ奏者として広くヨーロッパ中を演奏旅行し、楽器の改良にも携わる一方で作曲の才能も発揮した人物だ。20世紀の名曲からは、無伴奏のタイトル曲、ヴェイロン=ラクロワがピアノを弾いているプーランクのソナタ。プーランクは、第1、第2楽章をやや抑え気味に進め、第3楽章で一気に勢いをほとばしらせる快演だ。(松本泰樹)