平城京跡から出土した長屋王家木簡の謎解き
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1988年8月(今から20年余り前)平城京跡から長屋王家木簡が検出され始めた。
その木簡資料に基づいて奈良貴族の時代の実態を明らかにしようとしたのが本書である。35千点にものぼる膨大な木簡群を解説し、そこから藤原氏との政争の中で長屋王家=北宮王家の日常生活がいかなるものであったかを推測する。
「長屋親王宮[魚包]大贄十編」の十文字が墨の色も鮮やかに浮かび上がった。発見現場に居た人は皆興奮したという。これだけではない。束になって出土する木簡はまるごとコンテナに詰められて運び出された。長屋王の変で自刃した人の名も出てくる。全貌の解明はまだまだ謎のままである。
長屋王は、天武天皇の孫、壬申の乱の功労者高市皇子の子として左大臣として政権を担当しながらも、決して幸運の一生ではなかった。陰謀渦巻く平城京、その華麗なる貴族の蔭に何があったのか、謎解きは今後にある。