神器を巡る熾烈な政治ドラマ―国制史の一側面
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本書は、中世史を専門とし
現在は大阪観光大学研究員である著者が
三種の神器について記した著作です。
皇位の象徴とされる「三種の神器」
著者は、古事記に記された伝承や律令制の下での位置づけ
そして、源平の争いの中での逸失とそれに対するの対応を紹介。
そのうえで、鎌倉後期から南北朝の分断〜再統合の中で
三種の神器にどのような政治的意味が付与(あるいは剥奪)さたのか。
そして、朝廷や幕府・諸大名など神器と深くかかわる人々が
どのような政治的駆け引きを繰り広げたのかを解説します。
神器無しで執り行われた後鳥羽の即位、
神器の帰還に熱狂に沸く人々と一条兼良の醒めた眼差しの対比―など、
いずれの記述も興味深いのですが、なかでも印象深かったのは
嘉吉の乱で断絶した赤松家の再興に、
南朝の末裔からの神器奪還が深くかかわっていたという記述です。
赤松家と神器という関係自体が初耳で、とても興味深いうえ
有力な旧臣の助力によって赤松家の再興が果たされた―という指摘は
後に赤松家の家中から浦上、宇喜多など
アクの強い家臣が出てくることの遠因のように思えました。
政治的シンボルをめぐる政治ドラマを通じて
中世における国制や天皇制核心のをも浮かび上がらせる本書
日本史や政治史に興味のある方に限らず
一人でも多くの方におススメしたい著作です。