ジャーナリスティックな博士論文
★★★★★
30歳なるかならないかの著作には驚いてしまう。博士論文が基本になっているとのことだが話題が911テロ以降のインドネシアのイスラムを中心にしたことなのでジャーナリスティックだ。平易な解説で納得させられながらどんどんつり込まれて読んでしまう。イスラムの学校制度も難解な政変も平易な流れで苦も無く理解した気にさせてくれる。シンプルな文脈がゆえに難解な現実を解りやすくしてくれているのだろう。インドネシア問題については宗教よりも民族問題として捉えることが多く、それがため複雑だった。この書はそれを払拭してくれた。切り口をイスラムと現代にして焦点を合わせてくれたことと、何よりもまして著者が若いにもかかわらず功名に走りもせず知ったかぶりもせずに謙虚に記述してくれたことによるだろう。世界問題としては亜流で末梢的で未開的と見られがちなインドネシア問題を世界的な潮流に浮き上がらせ現代の同時点の問題として見せてくれることに成功した。名著です。