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百年の家 (講談社の翻訳絵本)

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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二十世紀を映し出す百年の家 ★★★★★
私が心を持つ家として最初に思い出すのは、
バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』である。

「彼女」は、静かな田舎でリンゴの木や畑にかこまれて幸せに暮らしていたが、
やがて周りが町になり、数奇な運命をたどることになった。

「ちいさいおうち」が生きた物語は、その持ち主の人生くらいで、
人の2代、3代くらいの長さであった。

本書の家が生きた歴史は、もっと長い。

家は1656年生まれ。扉にあたる、家の言葉がしみじみと深みを持つ。


  この家の扉の上の横板に、1656と記されているのが読めるだろう。

  それがこの家、つまり、このわたしがつくられた年だ。それはペストが大流行した年だった。

  はじめわたしは石と木だけの家だったが、時とともに、窓ができて、わたしの目になり、

  庇ができて、人の話し声も聞こえるようになった。わたしは、さまざまな家族が住んで

  育つのを見、おおくの木々が倒れるのも見た。たくさんの笑い声を耳にし、たくさんの

  銃声も耳にした。

  なんども嵐が来て、去って、なんども修理がくりかえされたが、結局、わたしは住む人の

  いない家になった。

  そして、ある日、キノコとクリを探しにきた子どもたちが、勇敢にも、人の住んでいない

  この家のなかに入りこんできたのだった。

  そうして、いまにつづく現代の夜明けのときに、わたしには、新しいいのちが吹き込まれたのである。

  この本は、古い丘にはじまり、二十世紀を生きることになった、わたしのものがたりである。

                                       2009年


この扉文で、著者が家の命をどのように捉えているのかがわかる。

家は、家としてできあがったときに目も耳も得るが、
人が住んでいることでこそ生かされるのだと。

この家は1656年生まれだが、本書は「百年の家」(原題:The House)である。

20世紀の人々とともに生きたことが物語りになっているのだ。

家が何世紀も命を持ち続けるという感覚は、頑強な石の家を作り、
何年も住み続けるという感覚のある西洋ならではかもしれない。

日本はもったいない精神で大切に物を使う時代ならば、
家だけでなくあらゆる物に対して
そういった感覚を持ち合わせていたかもしれないのだが・・・。

西洋も家への感覚が変わってきていることを本書は示唆している。

1900年、廃屋だった家を子どもたちが見つけるところからお話は始まる。

本書は、左側に小さな挿絵と年、右側に四行の文章のページと
その年に対応して、見開きで家と周りの風景を描いたページで構成される。

1900年の挿絵は、木の実を集める子供たち。

小さなサイズの絵だが、ポストカードとして眺めたくなるような絵だ。

四行の文章は、このように書かれている。

  ざわざわと、騒がしいためいきのような声がした。

  ―「見ろよ! おっそろしく古い家だ」

  もうずっと、ただの廃屋だったわたしを、

  やっと見つけてくれたのは、子どもたちだった。

本書は非常に大判の絵本であるが、
この歴史をもった家と周りの風景を描き出すにはちょうどよい大きさに思える。

絵はひとつひとつが非常に細やかにていねいに描かれている。

1900年のページでは、家を見つけてやってきた10人の子どもたち、
家の周りの木々や生き者たち、そして、忘れ去られていた家。

1901年は、家を修繕している人たち、
そして、周りの土地を耕す人と牛、木は切り倒されている。

1905年は、移り住んできた人たちが、
木を切ったところに苗を植えている。
上では家畜を放している。

人がやってきて生活を始める様子がそのまま家に、
そして、この絵全体に生命を与えているかのようだ。

1915年は、家の娘の結婚式。

1916年、そして子供が生まれた。

1918年、第一次世界大戦が終戦したが、兵士だった夫は亡くなった。

挿絵の妻が泣いている。家は雪景色の中だ。

1929年、1936年・・・。

そして、戦時下の1942年。

この色彩の暗さは何だろう。

くっきりと濃い影が存在する。

でも、家はこの中でも確かに希望の灯りとして存在していたのだ。

オレンジ色の光に力があり、温かい。

この1942年の見開きページがちょうど本書の真ん中のページに相当する。

これはそのままひっくり返すと表紙と裏表紙とまったく同じ絵であることがわかる。

四行の言葉に、そして、絵に込められた行間。

この家の死は、戦争で訪れたのではなかった。

1967年の葬儀。

  みんなが集まっている。雨降る日の葬式だった。

  母親の柩を乗せた車が、わたしの前を通り過ぎてゆく。

  心をなくした家は、露のない花のようなものだ。

  弔いの鐘が、ひそやかに鳴った。

戦争の日々よりも、寂しく悲しい色彩の絵。

悲しんでいるのは、雨の葬儀に集まった人たちだけではない。

そして、この家には誰も住まなくなる。

1973年。

  いままでの暮らし方を継がない。それが新しい世代だ。

  だが、若さだけで、この家の古い石は、とりかえられない。

  この家がわたしだ。けれども、わたしはもうだれの家でもない。

  運命をたどってきたわたしの旅のおわりも、もうすぐだ。

1999年。

このページの文章ははじめて、四行を越えている。

そして、ここに込められた言葉の深さ。

この家が生きたのは二十世紀だ。

二十一世紀を描くとしたらどんな百年の家になるのだろう。
20世紀を生きた家〜未来を生きる子どもたちへのメッセ−ジ ★★★★★
丘の上の一軒の家を通して、100年の時の重みを伝えてくれます。

もともとこの家は、その扉の上の横板に記されているように、
ペストが大流行した1656年に建築されています。
ある日、子どもたちによって、新しいいのちが吹きこまれます。

二度の大戦を経験した20世紀。
結婚、子どもの誕生、夫の死、葬儀・・・
喜び、悲しみをともに見守ってきた家。

21世紀を迎え、再び新しく甦った家と風景。
「おっそろしく古い家は、いまどこにある?
 なくなったものの本当の護り手は、日の光と、そして雨だ。」とむすばれます。

「家」を語ることによって、歴史を生き抜いてきた人間が描かれます。
同時に、そこに温かい家族や地域の姿が伝わってきます。
さらに、その温かい家族や地域の絆こそが、
戦争や疫病、災厄から人間を守る力の源泉である、
と、そんなメッセ−ジが読み取れるようにも思えます。

年代を記したペ−ジの小さな絵も含め、
一枚一枚に描かれた風景や一人一人の表情が、
この絵本を手にする人に、いろんなことを語りかけてくれます。
20世紀を生きた「家「=「人・家族・街」を通して、
未来を生きる子どもたちへ素敵なメッセ−ジを伝えているのでしょう。

また一冊、いい絵本に、出会えました。
まるで美術館にいるよう ★★★★★
 お話は「つみきのいえ」や「ちいさいおうち」のように家を主人公としていますが、その内容は戦争の時期も通り過ぎてゆき現実的で淡々としています。この絵には確かに、現実的で子供っぽくない文章が合っているのだと思います。ただそのため、お話の内容だけを考えると、小学校2年生の幼い男の子にとっては、眠くなってしまうかもしれないかなとも思われました。
 絵が本当に芸術的なため、美術館で絵画を鑑賞している気持ちになりました。表紙のように素晴らしい絵が次々に続きます。その感動は幼い子にも伝わるようで、実際読み聞かせしてみたら、眠くならずに家の変化を確認しながら絵を熱心に見つめていました。絵が美しい本は沢山ありますが、この絵の迫力はどの本にも勝るとも劣らない大変貴重なものだと思いました。
家が語る家族との日々 ★★★★★
ロベルト・インノチェンティは時間そのものを画面に定着することが
できる数少ない絵本画家と言えよう。彼の作品からは最新のものであっても、
まるで大昔から存在していたかのような時間の重みを感じ取れる。
その彼がこのタイトルで描くのですから、中身のすばらしさはページを
開くまでもなくわかってしまうのが、唯一残念なところ。(個人的にね)

百年もの歳月は1900年から始まり現代へといたる。視点はとある森に
古くから存在する石造りの家に固定されたまま。面積にして50m四方だろうか。
限られた空間が、そこで生き継がれていく家族のドラマを際立たせています。
文章を書かれた方には悪いですが、画面をながめているだけでも
作品に込められた想いは充分に伝わってきました。

ラストシーンは衝撃的。でもそれさえ人間の営みなんですよね。
無限に広がる想像力―受け継がれるぬくもり ★★★★★
本書は、イタリア出身の絵本画家とアメリカ出身の絵本作家による

家そのものを主人公にした絵本です。


南欧とおぼしき山間にある、石造りの小さな家。

17世紀に建てられ、廃墟になっていたその家が,

激動の20世紀をどのように過ごしたのかを定点観察形式、

ブリューゲルを思わせる、あたたかみのある絵で描かきます。


廃墟が改築され、家族が移り住み、

喜びと悲しみ・出会いと別れを繰り返す。


住人たちの服装の変化はもちろん

井戸ができ、ポンプになり、水道が通る

裏山の木が伐られ、石垣ができ、ブドウ畑が作られる…など、

時代の経過が細かく書き込まれており、何度見ても飽きることがありません


ブリューゲルを思わせる、あたたかみのある絵

コンパクトながらも、詩情豊かな言葉

どのページも印象的ですが

個人的に、忘れがたいのは最後のページ。

人々の営みが時代を越えて受け継がれる様子に、つよく心を打たれました


静謐ながらも、ぬくもりとドラマに満ちた本書

絵本が好きな方に限らず、

多くの方に強くオススメしたい一冊です