統計解析をする人はぜひ手元に置いておきたい本
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統計解析をする人にとって、統計理論も大切だが、実際に解析作業ができなくては意味がない。たいていの統計学の教科書は統計理論にページを割くあまり、もっとも実践的な検定(および推定)作業について、具体的な手順がわからないことが多い。また数ある検定法を辞書のように調べるには統計の教科書は不便である。
本書は、極めて実践的に作られており、実際の検定作業をしようとしたときに、
1.まずどの検定を適用すべきか
2.どういう手順で検定統計量を計算し、どういう比較で検定すべきか
3.その際に注意する点は何か
が、32の検定と12の推定ごとに、具体例を交えて記されている。
決して統計ソフトに頼ることなく、自分で電卓で計算し、巻末の数表を使えば答えが出せるようになっている。数式についても実用的に記されており、参考になる。
私は本書を常に手元においておき、実際はExcel関数で境界値を算出し、本書の通りに計算して検定作業を行っている。
検定や推定は、手順さえしっかり踏めば、誰でもできるだけに、分かりやすい解説書を手元に常に置いておきたい。そういう意味で本書は最適である。
なお、本書だけで検定や推定を学ぼうとすることは不可能である。本書はすでに統計の基礎を学んだものが、実践的に解析する際に、リファレンスとして利用するものである。よって、統計理論を知らずに本書を使っても、意味がない。逆にある程度統計の知識があり実務で統計解析を行うものにとっては、本書のありがたさが身にしみて感じられるはずである。
タイトルに惹かれて
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タイトルに惹かれて、数日前に、この本を手に入れた。初めてページをめくってみて、すぐ、こんな本が欲しかったのだと直感した。それは、仕事柄、検定を行なうことはあるのだが、ここまで総合的、系統的に、徹底して、推計統計学の中心テーマである検定と推定に絞った本は、あまり見たことがなかったからだ。44の例題とそれに対する明快な解答は、具体的で、すぐ仕事に役立つので有難い。この本の「はじめに」の箇所で触れていたが、今では、検定作業は統計解析ソフトで処理することが多い。便利この上ないが、なぜ、そういう結果が出てくるのかといった点については、実のところ、隔靴掻痒の感じがしていた。この本では、そこのところを理論および実践の面で丁寧に解説しているので、なるほどと納得できる。この本では、小サンプルのデータに対して母集団の分布形にとらわれずに使えるノンパラメトリック検定の解法も数多く紹介されている。自分にとっては新しい領域なので、ぜひ、実際のデータに適用してみたい。この本の中の「検定と推定を学ぶための予備知識」(基本統計学)だけでも、充分読み応えがあるし、自分の知識レベルの確認にもなる。どの統計の本にも巻末には分布数表が掲載されているが、そこに載っていない自由度の計算も逆数線形補間法でやればうまくいくことも紹介されている。この本の44の例題は、検定と推計のほとんどの解法を網羅しているようだし、解法をいちいち記憶しておくことも不可能なので、この本を常備しておき、必要なときに、その都度、参照していくつもりでいる。この本の欠点を探してみた。本の値段である。それほど高くもないが決して安くもない。