暦好きに新たな地平を開く
★★★★☆
旧暦に興味があって暦法の本などはいくらか読みました。
イスラム暦、ユリウス暦、中国の農暦程度ならば多少の知識もありました。しかし、この本には驚かされました。
現代でも国境を越えて比較的広く使われている暦だけでも上記の他にイラン暦、タミル暦(びっくりするほど宗教的な祝日が多い)、ジャワ暦などがあり、
主として一国だけで使用されている暦についてはベトナム暦、北朝鮮暦、タイ暦、エチオピア暦など驚くべき多数があります。
マヤ暦、アステカ暦など現在は使われていないが歴法としてたいへん複雑なものも紹介されています。
暦によって曜日の意味が異なるので並べ方が違います。祝日が違い、年号が違い、一年の開始の時期も異なります。
一年の長さ自体が異なる暦もあるので、生活暦にそういった暦を用いる人々は年齢の数え方までグレゴリオ暦とは異なるそうです。
著者の収集した各国のカレンダーの写真が数多く掲載されており、文章は平易、簡潔で読みやすく、参考図書の紹介までついていますので
「面白そう!」と思われた方は是非読んでみてください。
これ一冊で「ああ、面白かった」で済ませてもよし、参考図書を手がかりにさらに暦についての本を読み進めてもよし。
よい本だと思います。
歴史・地理好き必見
★★★★☆
大変おもしろかったです。
シリーズの読者設定はおおよそ中学生くらいからと思われますが、この分野に興味のある子だったら(そして読書好きなら)小学校高学年からいけると思います。
人文分野で、ジュニア向けのこういうシリーズはなかなかないので、(岩波ジュニア新書くらい?あちらは理数分野もカバーしてますが)とても貴重ですね。読みやすさは岩波より上です。(ルビふり・版型のせいかな?)
著者は国立民族博物館・総合研究大学の教授で、内容はカレンダーを素材にした文化学、という感じです。
カレンダーが内包する、その時代時代、その国その国の文化事情などの分析はもりだくさんで、とても面白いです。「ゴミだしカレンダー」についての考察は短いですがとても感銘を受けました。あんな身近なものからそんなことが…。
グレゴリオ暦、ユリウス暦といった西暦や、日本のいわゆる旧暦などの暦法についての基礎知識に触れられているのも良いです。暦法というのは、自国他国問わず文化を考えるときにとても大切なものだと思うのですが、なかなかそれについて学ぶ機会が持ちにくいです。
本書は最低限のことしか述べてはいませんが、網羅的であることは高く評価できますし、入り口としては十分以上だと思います。
個人的には、この夏「世界のびっくりお祭り」をわけあって調べていて疑問が残った「ヒンズー暦」「イスラム暦」についての疑問が氷解したのが大収穫でした。
歴史や地理が好きな方、他国の文化に興味のある方(いや自国のも)、一見の価値ありと思います。