怯える少女、闘う少女たちの文化史
★★★★★
本書は、写真誌の編集者を経て
現在は写真評論家として活躍する著者が
独自の観点から70年代以降の少女マンガを読みなおす著作です。
著者は、70年代以降の重要な少女マンガの登場人物に見られる
「飛躍」、「違和」、「固着」、「蕩尽」などの特徴に注目し
こうした特徴を持つ少女を「純粋少女」名づけます。
そして、それが社会の変化とともに、
どのように変容していったのかを
大島弓子さん、萩尾望都さん、岡崎京子さん
などの漫画を手がかりに分析します。
また、終章では、少女漫画の空間原理と
それを生みだす少女たちの「怯え」と他者との「共振」に注目し
それらが、石牟礼道子さん、大江健三郎さんをはじめ
HIROMIXさん、雨宮処凛さん
など他の戦後文化との共通性を論じます。
著者自身の経験や、漫画への想いが色濃く反映され
いわゆる「マンガ評論家」による分析とは一味ちがう本作。
個別のマンガの解釈や認識には
個人的な読み方の相違にとどまらない
世代的な読み方の違いも感じ
マンガを語ることの面白さ・奥深さを再発見させてくれました。
少女マンガに限らず、マンガが好きな方はもちろんのこと
50年代生まれの著者と同世代の方などにも強くおススメしたい著作です。