20のフランスの炉辺の幻想
★★★★☆
外科である筆者が普仏戦争に従軍した際、故郷の子どもたちのために書いた創作メルヒェンです。願い事を一度だけかなえてくれる「魔法の指輪」や悪魔の苦労話を描いた「悪魔が聖水のなかに落ちた話」など20のお話が収録されています。「つつましい、しずかな客観性」(訳者あとがき、263頁)とあるように、やたらに教訓を垂れたり愛について描いても過度にロマンチックでなかったりとレアンダーの筆は謙虚なたたずまいが特徴です。またたいてい憎まれ役の悪魔や金持ちに対しても筆者は同情の念を持っており森羅万象への謙虚な愛を感じました。グリム、ペローそしてアンデルセンらとは異なるメルヒェンを楽しめます。