さすがです
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松井茂記教授は憲法、中でも司法審査や表現の自由、アメリカ憲法などがご専門ですが、これら以外の分野においても、この本では日本国憲法の全体について丁寧に解説してあります。ですます調で非常に読みやすくわかりやすい。かといって単なる入門書にとどまらず、結構専門的なところ(学説が分かれるところなど)についても書いてあります。各章の最後には憲法学の最先端で議論されている問題を提起してあり、非常に興味がわくところです。
日本国憲法はアメリカ憲法の影響を大きく受けており、アメリカとの比較は非常に有益と思われます。この本ではそのあたり秀逸といえるでしょう。初学者にももちろん読んでもらいたいですが、むしろ一通り憲法を勉強した人が、復習とより発展的な問題を考えるきっかけとして本書を利用してもらいたいです。かなりおすすめです。
なお、松井教授の「プロセス的憲法学」は全面的には出てきません。基本的には通説ベースでの説明で、ところどころプロセス的憲法学からの問題提起があるくらいでしょうか。松井教授の理論に興味のある方は「日本国憲法(第3版)」(有斐閣)や「二重の基準論」(有斐閣)、「司法審査と民主主義」(有斐閣)などを読まれるとよいでしょう。