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The Beatles Anthology

価格: ¥7,193
カテゴリ: ハードカバー
ブランド: Chronicle Books
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いまさら、ビートルズについて新たに語るべきことがあるのだろうか?いや、これまで言いたいことを言い尽くしていなかった人たちがいる。それはビートルズ自身と、ごく近しい友人たちだ。彼らに直接話を聞けば、新しい真実が明かされるはず。『THE BEATLES ANTHOLOGY』に映し出されるビートルズの世界は、まるで万華鏡のように千変万化だ。しかもそこには鋭い洞察力が感じられる。この本の魅力は多層的で、まずは、視覚的に楽しませてくれる。リボルバーのオリジナル・アルバムのカバーなどという豪華名品から、信じがたい若さのメンバーたちのポートレートまで、思いもよらない未公開写真が満載だ。次に、かなりの大書にもかかわらずさらりと楽しく読める。引用されているビートルズの言葉は、どれも才気にあふれ思慮深く、ミック・ジャガーが「4つの頭を持つモンスター」と呼んだグループのメンバーそれぞれが、独自の考え方を持っていることを示している。たとえば潜在的な直観能力を解放するために頭にドリルで穴を開けよう、というのはジョンならではの発想だ。(ポールはジョンに、自分がまず試してみろと言ったらしい)。

いちばんの魅力は、ビートルズが彗星のように世界を席巻する過程を、メンバーと同じ視点で「裏側から」見られることだ。たとえば、ティーンエージャーだったジョンやポールと一緒に、「モク(タバコ)をやりに」墓地にこっそり忍び込む。そこで2 人は、墓碑に刻まれていた、ファーザー・マッケンジーや、エリナー・リグビーといった名前を、無意識のうちに頭に刻んだのだ。あるいは、ポールが夢の中で、ある曲に最初につけた歌詞を聞くことができる。「Scrambled eggs, oh, my baby, how I love your legs.(スクランブルエッグ、ああ、愛しいきみよ、きみの脚はなんてすてきなんだ)」(さいわい、できあがったのは『イエスタデイ』だった)。また、エルビスと一緒に即興演奏をしたときのことや、ボブ・ディランにマリファナを吸わされた夜のことも、詳細に知ることができる。(ポールは興奮状態で「宇宙のメッセージ」を書きとめ、翌朝、「THERE ARE SEVEN LEVELS」というフレーズが走り書きされているのを見つけた)。たった1人、スタジオで幻覚剤のLSDを服用したメンバーがいたこともわかる。アンフェタミンと勘違いしたジョンだ。アビー・ロードのスタジオの屋上で、星の美しさに驚嘆して、『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』のヒントがひらめいたはいいが、あやうく足を踏み外して死ぬところだった。

本書は、ビートルズというグループの自然体で伸びやかな面を、しっかりと捉えている。その伸びやかさがあったからこそ、彼らは不滅のグループになったのだ。さまざまな争いごとが明らかにされているが(『ヘイ・ジュード』で、ジョージがポールのボーカルに応答するギターのフレーズをつけ加えたとき、ポールがそれに反対してもめた)、なぜ彼らが共に活動していたかについてもつづられている。リンゴは、いみじくもこう言っている。「エルビスには、へつらう人はたくさんいても、友だちはいなかったみたいだ。だから坂を転げ落ちていった。それに比べてぼくたちは、みんな代わるがわる頭がおかしくなっても、決まってほかの3人がそいつを正気に引き戻したんだ」

ビートルズを愛したことのある人はみんな、この本のおかげで、かつてなじみだった場所に帰ってきたような気持ちになるだろう(そして今なら、ヨーコも温かく迎えてくれる)。