『透過性恋愛装置』とは雰囲気が違います
★★★★☆
だいぶ前に読んで、すでに手元にないので少し曖昧なレビューになってしまいますがご容赦ください。
この本にたどり着いた方は大抵『透過性』を読んだ方が多いと思うのですが、双方にいえることは、ともに男性のレベルが高いって所ですね。
『透過性』 30代で老舗一流ホテルの部長(攻) と 若手一級建築士(受)
【進行性】 自ら会社を興す若き社長(だったかな?)(攻) と その優秀な秘書(受)
しかし内容は真逆で『透過性』は暖かみがあり、【進行性】は冷たい空気が漂っているといった感じです。
『透過性』に暖かみを感じるのは人間くささや萌えがあったからだと思います。
『透過性』 (攻)落ち着き払った穏やかで知的な大人→実はムッツリおやじ
(受)傍若無人なわがまま王子様→本気で恋をすると中学生のように素直になる
これが【進行性】には無いんです。
学生時代も一緒に仕事をするようになってからも、まるでロボットのような(ツンツンした)二人が意地の張り合いで(?)完璧に冷静な仮面をかぶって機械的に動いていて始終温度が感じられません。結局(受)が崩れ落ちるようにはなるんですが(たしか)、それが萌え(プラス)にはならないんです。
結末(そうなること)を知っているから(『透過性』は通常の進行ですが、【進行性】は結末が一番最初にくるんです。それも私的にはちょっと×でした)
だから最後くっついて、よかったねおめでとー><とか思わないんです。
と、私の愛読書にはならず一回読んだだけで早々に売り飛ばしてしまいましたが、今では後悔しています。
たまに読みたくなるのです。たぶんこの本は何回も何回も読んだら味が出てくる本だと思うのでちょっと早まったかなと。
気が向いたらもう一度買ってしまうかも^^
それと、社員さんにかなり魅力的なおじさんがいた気がしますが全く覚えてないのでそれは読んでからのお楽しみということで^^
何度も読み返してしまう不思議な読後感
★★★★★
初読のとき、どこかすっきりしない煮え切らないような読後感
だったのですが、その後、繰り返しページをめくっては、
じわじわと何度も愉しめています。
未来を嘱望されたバスケ選手だった九鬼と、
後輩マネージャーだった御巫。
誰にも告げずアメリカへ飛んだ九鬼と、彼に捨てられた御巫が、
10年後日本で、敏腕社長と秘書として再会。
お互い、過去を忘れたように振舞うけれど・・・
冒頭が、アンソロジー掲載された短編「ドラスティック・メタモルフォーゼ」で、
主人公の九鬼と御巫が過去の確執を越えて恋人同士となります。
続く中篇「報復モラトリアム」では、
二人が結ばれる結末を知りつつ、彼らの過去を辿ることに。
結末を知らずにこの中篇を読んだら、
おそらく九鬼の傍若無人さや、
それに振り回されながら盲目的に慕う御巫の姿勢は痛々しく、
かなり重くて暗い一昔前のBL小説の風情なのですが、
読み手は既に二人がどんな結末を迎えるか知っています。
結末を知りつつ二人の過去を読み解く、という体験は、
辛い出来事も結末のためのエッセンスとして、
不思議と甘く、やさしい気持ちで読めるという新鮮なものでした。
そのため、一度で終わらずに、何度も思い出を振り返るように、
読み返しては二人の過去を辿って楽しめる。
最後に甘々の短編もついて、3篇それぞれ、しみじみ味わえる1冊です。
そして、ラブラブな恋人同士になったばかりの2人。
(知り合ってからの年数は15年にも及びますが・・・)
このさらに後の後日談がぜひ読んでみたいなぁ。
それぞれ個性的な社員の皆さんも気になります(笑)。
沢海さんが気になります
★★★★☆
今さんのイラストのかわいさんの作品だし、いつものように爽やかなお話かと思ったら、冒頭から全然違います。飛ばしてます。それもそのはず、アンソロジーに書かれた短編が初出だから。テーマは「びしょぬれ」。つまりそういうエピソードから始まってる話。
でも全然エロくない(笑)。かわいさんはこういう直接的な表現よりも、押さえて押さえて、屈折した気持ちが思いもかけない形で表に出てくる瞬間を書くのが抜群に上手い。この本にもそういう瞬間はあるけれど、そこにいたるまでの描写がちょいと不慣れな感じで新鮮です。そしてあとからバックグランドを補完してるのも珍しい。傲慢社長×ツンデレ秘書なんていう、いかにもBLなカップルのお話。
私が一番心ひかれたのは、食えないナイスミドルの沢海(そうみ)さんです。大手都銀出身の人事部部長。社長と秘書がお互いにひかれながらもツンツンしているのに気がついて、上手に根回ししつつもそれを感じさせないしたたかさが素敵です。いっそ、沢海さんとどっちかがくっついてくれたら楽しかったのに。いやいや、沢海さんは愛妻家なので、たとえ社長が押し倒しても上手に逃げてしまうに違いありません。