世界と日本のちがいにも着目しているが,まだ近視眼的
★★★☆☆
世界でアニメ,ゴスロリ,コスプレなどを取材し,イベントに参加してきた著者が,そのパワーや世界の若者のかんがえかたなどについて書いている. おなじ著者が 「世界カワイイ革命」 などの本も書いていて,基本的な方向はかわらない. しかし,この本では世界と日本とのちがい,とくに世界ではコスプレがうけいれられているのに日本ではあまりうけいれられていないことなどがとりあげられている.
しかし,世界の現象も日本の状況も,十分に分析されているとはいえない. 「クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった」 のはたしかだろうが,アニメがどれだけそれにとってかわれるのか,近視眼的なこの本からはこたえがみいだせない.
日本アニメの世界評価がわかる。
★★★★★
確かに本書に書いてあるがごとく、例えば、Amazonのフランス、ドイツ、イギリス、カナダにおいては、コミック本の中の”Manga”、またはDVDの”Anime”といったジャンルでは、日本のマンガやアニメが独占状態でランキングしており、これらの人気が非常に高いことがよくわかります。
ただし、アメリカにおいては、決して日本のものが上位ではなく、アメコミや日本のマンガ・アニメに類似した外国製が占めているようです。
海外でマンガやアニメがポップカルチャーとして人気が高く、今まさしくトレンディであるということは、畳み掛けるように力説している本書を通じて、よく理解することができます。
官・民一体となって、グローバルな展開として、これらをトリガーとして市場を開拓していけば、近い将来、サブタイトルにあるがごとく”クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった”ということが言える時代が来るのかもしれません。
クルマはものづくりの知識や品質に関して垂直統合と呼ばれ、技術的には諸外国が世界水準まで追いつくのは難しいところはありますが、少なくとも家電であれば、ものづくりがモジュール化していることから、日本の技術はすぐに流出し、BRICsといった新興国により、同じものを安く開発することができるのが実情です。
ところが、マンガやアニメといったものは、独創的なアイデンティティーであり、日本人の性質より継承してきた知識統合、すなわちナレッジであるので、そう簡単に諸外国にコンテンツを真似されることはないでしょう。
著者は、日本のマンガやアニメは、アメコミなどに見られるように単純な善悪のデジタル判定を伴うヒロイズムだけではなく、そういった是是非非を問うというよりも、繊細で複雑な感情のもとで、登場人物のきもちの表現を描写しているところが読者のこころのなかに共感し浸透していくものであるということを力説しています。
著者の「世界カワイイ革命」も読みましたが、幅広い読者層にて視野を深めるため、本書は一読の価値があると思います。
「病気も治る」!?マンガ・アニメの効能
★★★★☆
「アニメ文化外交」「世界カワイイ革命」に続く日本文化の海外における熱狂ぶりの現場ルポ。バブル崩壊から20年。大不況、背後に中韓…国際競争力も落ち地盤沈下も進み、ガラパゴス化?それもいいじゃんみたいなほど自信喪失の日本。刀折れ矢尽きた我々を癒してくれる文化は、我々の知らぬ間に世界の若者の憧れの的になっている。本書は前二作と同工異曲で、外務省主催イベントの報告、アニメの見本市の報告で構成されているが、これまで取り上げられないかったブラジルの隆盛ぶりに紙面が大きく割かれるなど、内容のダブりはなく、著者がブラジルで触れ合う日本ファンたちの「アニメに夢中になって病気が治った」「アニメに夢中な人は麻薬をしない」…そのうち「がんが治った」なんて出るんじゃないかというほどの心酔ぶりにただただ驚かされる。
前二作でも感じたが、本書中に出る作品の大半が自分には未読、未見。それほど外国のファンの日本文化への知識は深い。ブラジルにもCLAMPファンが多いらしいが、陽気なラテンの人に陰鬱な「東京BABYLON」のストーリーは受けたりするんだろうか、いやそもそも少女マンガ自体が日本人じゃないと理解は…という誤った先入観も、「NANA」や「セーラームーン」の出てくる本書で見事に打ち砕かれた。
別に本書のサブタイトルのように、無理に文化で稼ぎに行く必要はないと思うが、著者の言う通り、これだけ世界に日本ファンがいるということを日本人も認識し、自分たちの感性に自信を持つ一助としたい。そして、マンガ、アニメを視聴することで、優れた作品を続々海外へ送り出し、日本ファンを増やしていくことが何より重要なのではないかと感じた。
世界は日本化している
★★★★★
ちょうど10年前に『21世紀、世界は日本化する』という日下公人さん
の著作を読んで半信半疑(というより、2信8疑ぐらいだったが・・・)
に思った頃が懐かしい。櫻井さんの前作『世界カワイイ革命』、『アニ
メ文化外交』のどちらも読んでいたので、本書は相当重複が多いことを
承知で購入した。実際、取り上げられているトピックスは重複が多いの
だが、しかし披露される数々のエピソードはどれも新鮮で意外なもの
ばかりだった。ジャパン・クールに関する情報にはかなり精通していた
つもりだったが、世界の現実ははるかに凄いことになっているようだ。
氷点下の中、エヴァンゲリオンの新作を見るために4時間並んだ500
人のロシアの若者たち。動員数16万人のパリ『ジャパン・エキスポ』。
ブラジルでのロリータファッションショー、2万人でのハートマーク。
バロセルナを訪れたカワイイ大使に殺到するマスコミの取材。ローマで
大人気だった制服ファッションショー、などなど。世界各地でアニメや
マンガに夢中になる若者が増殖していることがヒシヒシと伝わってくる。
しかも、興味の対象はアニメ・マンガにとどまらずにやがて日本文化全般
に拡がってくるという。
最近では日本のマスコミでもこの種の話題が取り上げられることが少し
増えてきたのは喜ばしい傾向だけどもまだまだ全然少ない。どんどん日本
化して行く世界の状況にもっとも疎いのが日本人だというのは哀しい。
できるだけたくさんの人に櫻井さんの著作を読んでもらいたいと切に思う。
文化とは国が守るものか?
★☆☆☆☆
アニメ・コミックが文化であるというのはその通りでしょう。しかし、国がお金をかけない事がアンフェアであるという主張は理解に苦しむ。
国が保護したからといって発達した「文化」が他にあったか。また、アニメ産業をいくら振興したからといって、自動車産業以上の外貨を稼いだり、労働人口を生み出すハスもないのはちょっと考えれば解る事。