大人っぽい艶はあれど、内容は・・・
★★★☆☆
久我作品にしては、かなり大人な雰囲気でした。
少し前の時代の彫師と博徒、そこにヤクザが絡んだちょっとだけ裏の世界。
BLでしか味わえない独特の世界観が描かれています。
大人向けエロとしては艶めいていて、これ以上のエロさはないんではないかという出来。
読んでいるだけで受の八束の艶めかしい息遣いとか、その八束の身体をひらく源太のたくましさが容易に想像できる。
ですが・・・。
お話自体として、すみません、面白くありませんでした。
というか、大して内容がないです。
久我作品は、大阪弁という上にえてして作品自体にとてつもない面白みがあると思うのですが、その独特の面白みがこの本にはなかった。
たしかにエロくて淫ら、紋々入っててあり得ない世界に陶酔させてくれる。
その意味でのBLとしてはありでしょう。
ただ、内容を求める読者向けにはおススメしません。
任侠沙汰をメインにもってきても、そこに現実感が伴っていないので表面滑りしているだけに見えます。
絵も麻々原さんでとても綺麗で、表面上は文句なしの5つ星なのですが・・・・。
骨の髄まで惚れてみる
★★★★★
久我有加作品といえば基本サラリーマンや学生モノ、あるいはお笑い芸人シリーズ(大阪弁はデフォルト)の先入観があったのですが、これはその点異色作。大正時代の彫師・八束×博徒・源太です。
亡き師匠から「おまえの彫り物は美しいけど情があらへん」と評された八束。 その八束が、源太から求められ、また自身も源太を欲して情を交わし体をつなげることにより、彫師として人として深みのある艶を得てゆきます。
八束視点で話が進むため、前半の源太の心情がややわかりづらいかな?とは思いますが、寡黙な男設定なのでまぁ仕方なし。 未熟な彫師は最初、自分の体で試し彫りをするというコトで、八束は全身刺青だらけなんですが、それが一種俗悪なまでに色っぽいのですよ。麻々原絵里依さんのイラストもクールで都会っぽいのに、逆にマッチして雰囲気を盛り上げてくれてます。
しかし何と言っても、大阪弁で交わされる睦言のいやらしく艶っぽいこと。鼻血吹きそうでしたー。
博徒×彫師・・・ドストライク!
★★★★★
麻々原先生のイラストということで無条件に購入。
なんと幸運なことに内容も好みにドストライクでした!
イラストとの相性も最高。
舞台は大正八年。大阪。下町。博徒→暴力団への変遷の序章?勉強になります。
考証も相当しっかりされたらしく、違和感はなく、描写はどれも興味深く、情緒に溢れています。
伝説の彫り師の唯一の弟子であり、己の体で彫れる場所は全て彫り尽くしてしまった年齢不詳の魔性の彫師:八束。
生まれながらの博徒:源太22歳雄(あ、名前でひかないで!もったいないから。この作品世界ではしっくり来るんです)。
「抱きたいんやったら抱いてもかまへんけど、俺を抱いたらお前には彫らんぞ」
組を理不尽な理由で追い出され、中立である彫師の家にお預けの身となった犬は気ままに主人にじゃれつくんですが軽くいなされちゃう。
八束の体は彫り物で埋め尽くされていて、ちょうど下腹には牡丹が咲いているんです。
それをもろ肌脱いで襲いかかりながら撫で回す源太・・・決してその下には触れずに。
感じながら、源太の肌を美しいと見ほれながらも決して流されない八束。
月に照らされた八束の背中には荒波と緋牡丹を背負った大蛇がのたくり、源太は鬼を従え、閻魔を背負う。
描写がいちいち過剰なまでに艶やかで、イラストも相乗効果で、くらくらしましたよ。
ビバ刺青!
源太は寡黙な美丈夫で、うでっぷしはべらぼうに強いし、賭場ではそのカリスマは最高潮に達して、場を支配してしまう、それはそれは魅力的な男なのですが、それにも増して八束が色気ダダ漏れ過ぎる・・・
もともとしっかりしたお話を書かれる作家さんでしたけど、これは新境地といっていいのでは?
周辺には金魚隠し彫りしたボンボンだの、野ざらしといわれるシャレコウベを彫った附馬屋だの、周辺キャラも盛り上げてくれる。
野心のために若き日の執着を血を吐く思いで振り切ろうとする親分・忠五郎と、つれないぶれない若頭・与助のエピソードも、決して離れることのないメインの二人との対比として効果的。
NGと思われる属性の方
・関西弁
・時代物
・刺青
・言葉責め
「この蛇・・・・・、お前自身なんやな・・・・・・。この、牡丹も・・・・・」
「おまえのこの肌がもっと濡れて赤なったら、蛇はどないなるやろな」
だめだ、抜粋したくてもきりが無い。浅薄な卑猥語の羅列ではない、時代がかった濃厚な空気感をお楽しみ下さい。