百科全書の秘密を開陳した貴重な1冊
★★★★★
巧みな話しぶりに感動しながら、引き込まれる。特にコラム形式で関連する話題が挿入されており、これが大変良い効果がある。
博物学と書誌学の関係とか、索引や相互参照(cross reference)の機能、それとアーキヴィストとの指摘は大変興味深い。アーカイヴズはフーコーのアルシーヴに通じており、人類の知の保存形態であるMLA(Museum, Library & Archives)の関係性を百科全書の編集とその検証作業をデジタルで進める著者のライフワークを余すことなく語る。
その一方で、モンペリエ大学で学位取得の指導教員を担当されたプルースト教授夫妻の滞日活動を支援され、その夫妻の横顔をコラムで描かれ、これもまた大変興味深い異文化交流である。
知識論に関心をお持ちの方や図書館員には必読書であろう。蔵書との戦いと図書館機能に関する言及もあり、さらには日仏の映画を踏まえた議論は素人にも判り易い説明で著者の豊かな見識が垣間見れる。実に楽しく読める百科全書学の展開である。デジタルで蘇える知の啓蒙形式百科全書の秘密を開陳した貴重な1冊である。